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飯伏幸太の熱中症トライアングル。
27年目のG1クライマックス開幕!
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2017/07/18 17:30
苦戦を承知で地獄のG1戦線に戻ってきた飯伏。その目に宿る野望は、未知数の怖さを湛えている。
飯伏は「24時間プロレスをしている」。
飯伏、内藤、オメガ――この3人、プロレスに対する思考が似ているようでまったく異なる。
飯伏はひたすら観客が沸かせる技のことを考えている。
「路上プロレス」という概念や、「プロレス研究所」の主だから自然の流れなのだが、飯伏の脳は「24時間プロレスをしている」。そして、どうしようもなく気まぐれでもある。
欲しくもないだろうに「IWGP」を口にしてみたりする。
プロとしては突然消えたりするから、失格の烙印を押されても仕方がない。それでも、ファンが飯伏を見たいのだから、またリングに戻って来られるわけだ。
「武藤敬司のコピー」から「制御不能の王」へ。
内藤はファンの立場に立って、物事を考える。
自分がファンだった時代に、いろいろ想像をめぐらした快感が内藤の脳に鮮明に残っているのだろう。それが他のレスラーなどから新しい刺激を受けて、活性化されて、自然に行動に表れる。
プロレスというのは不思議なもので、当人が自信をもって放った作戦が、まったく支持されないこともあるし、逆に開き直りのような破れかぶれ的な窮地での策が光明を生むこともある。そうやって、昔は「武藤敬司」のコピーとまで言われた内藤は、そのコピーから脱却することに成功した。何をやっても、一線を越えられなかった男が、何をやってもやんやの喝采を浴びる環境を自ら立派に構築して、そのまま1年と数カ月が過ぎたのだ。
新日本プロレスの体制側への「制御不能」という反旗のひるがえし方が、まんまと好状況を生み出したわけだ。
その、いまや人気ナンバーワンの内藤は、当然だが「優勝するためにG1にエントリーした」と言い切る。
優勝決定戦では前年優勝者の「お客さまが一番見たいカード」としてオメガとの戦いを想定している。