サムライブルーの原材料BACK NUMBER
140戦連続フル出場より大事なこと。
いまだ鉄壁、中澤佑二の鉄の意志。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/07/05 11:00
かつての同僚は、食事面など生活習慣に驚嘆の声を挙げたという。それほどまでにストイックだからこそ、中澤は今も日本有数のDFとしてプレーできるのだ。
「ボンバーの何が凄いかって、手を抜かないこと」
いくらキャリアを重ねようとも、プレーで一瞬たりとも気を抜くことがない。自陣が危険にさらされたら素早くポジションに戻り、もし抜かれたとしてもシュートコースを限定させるように体を寄せて粘る。常にアラートのランプを光らせている。
「危ないと思って全力でポジションに戻れば、ワンプレー、ツープレー稼げるじゃないですか。その時間をつくったら味方が戻ってくることができる。瞬時の半歩でいいからコースの切れるところを切っておけば、それだけでも違ってきますから」
無駄なファウルは要らない。精いっぱいの「無理」をやっても、「無茶」だけはやらない。記録をたどると'13年シーズンからの4年間、警告の数は1年間で「1」か「ゼロ」。今季もまだ警告は受けていない。できる限りのことを、できる範囲で最後の最後までやり切る。それが中澤佑二である。
「ボンバーの何が凄いかって、それは一切、手を抜かないことですよ」
長年、中澤とともにマリノスのゴールマウスを守ってきた榎本哲也(現浦和レッズ)はそう言っていた。年長者の鉄人が手を抜かないのだから、周りがアラートを解けるはずもない。「堅守マリノス」の一つの答えなのかもしれない。
リスペクトを欠いた50%ダウンを提示されても。
中澤は横浜F・マリノスの財産である。
'02年に加入して以来、15年以上にわたってレギュラーとしてコンスタントに働いてきた。加えて、コンディション調整や守備の哲学は若手に対して最高の教材となっている。
しかし昨年11月には、推定年俸1億円の50%ダウンとなる提示を受けた。現在進行形で活躍する彼に対してあまりにリスペクトを欠いた数字だ、と筆者には思えた。プレーにおいて減額される要素は何ひとつない。「出ていけという意味なのか」と本人がそう受け取ったのも無理もなかった。ただ、クラブもダウン幅を減らしたうえで条件を再提示し、今年1月の契約更新に至った。