サムライブルーの原材料BACK NUMBER
140戦連続フル出場より大事なこと。
いまだ鉄壁、中澤佑二の鉄の意志。
posted2017/07/05 11:00
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
彼からすれば、特別な夜ではなかった。
横浜F・マリノスの堅守を支える中澤佑二は、7月1日のアウェイ、大宮アルディージャ戦でフィールドプレーヤーではJ1史上最多となる140試合連続フル出場を果たした。
4年掛け、それも39歳で。
どこかでケガをしたら、累積警告や一発レッドで出場停止になったら、この記録はなかった。途中交代でも途切れてしまう、言わば「鉄人」の証明。なのに、本人のトーンはまったく上がってこない。試合後、集まったメディアの前で彼は苦笑い気味に言った。
「(記録のことは)もういいでしょ。140(試合)達成したから、来週からは優勝争いに絡みましたみたいな」
個人記録よりもこの日暫定4位に浮上したチームを取り上げてくださいよ。そんなニュアンスをメディアに伝えて、選手バスに消えていった。
パスが来なくたって、シュートが来なくたって守る。
照れくさいわけでも何でもない。
試合に勝つため、チームがタイトルを獲得するために試合に出続けることは、彼にとっては最低限の義務と責任。自分のフルタイム記録にそれほど関心を抱くことがないのも納得できる。
シーズン開幕当初の2月下旬のことだった。
練習が終わった彼に、話の流れから守備におけるこだわりを聞いた。マリノスは伝統的に守備が堅く、失点数が少ない。その象徴として中澤はずっと君臨してきた。
「岡田さんに言われたんです。まあ大丈夫だろうって思うことをするな。パスが来なくたって守るんだよ。シュートが来なくたって守るんだよって」
'03、'04年とリーグ2連覇を果たした岡田武史監督のもと、叩き込まれた言葉を持ち出した。のちに日本代表でも岡田のもと南アフリカW杯でベスト16進出に貢献しており、中澤に影響を与えた指導者の一人だと言っていい。
パスが来なくたって守る。シュートが来なくたって守る。
この精神は、中澤を語るにおいて不可欠だ。