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デカくて強い選手が速く走れたら。
いわきFCはサッカーの常識を壊すか。 

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手嶋真彦

手嶋真彦Masahiko Tejima

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photograph byKyodo News

posted2017/07/05 17:00

デカくて強い選手が速く走れたら。いわきFCはサッカーの常識を壊すか。<Number Web> photograph by Kyodo News

明らかに数年前とは一回り体の大きさが違ういわきFCの選手たち。フィジカル重視のスタイルは日本でも成功するのか。

日本初の商業施設つきクラブハウスが凄い。

 6月上旬には、日本初の商業施設併設型クラブハウス「いわきFCパーク」が完成。余談となるが、各フロアの天井が高い3階建てで、横に大きくモダンなその建物に入ると、レストランやカフェで飲食が楽しめ、英会話教室で学べ、輸入車まで購入できる。

「いわき市を東北一の都市にする」を合言葉に、スポーツを通じた地方創生というイノベーションを目論むクラブの本気度が、この新規施設の威容からも窺える。

 いわきFCが推進するフィジカルの強化は、充実のトレーニングジムを完備したこのクラブハウスの完成で、いよいよ加速していくはずだ。公営の練習場を転々としていたクラブ創設1年目の2016年は、主にダンベルを使用した屋外でのトレーニングを継続したが、可能なメニューは限られた。選手たちの意識改革にも多くのエネルギーを費やさなければならなかった。

 なぜ、ここまでストレングストレーニングに手間暇を掛けるのか――。全国各地から集まってきた選手たちが例外なく首を傾げるほど、日本では前例のない取り組みなのだ。

「ようやく前進し始めた感じです。意識改革が進み、素晴らしい環境でストレングストレーニングもできるようになりましたから」

デカくて強い選手が走れるだけで、スタンドは沸く。

 反省もある。「日本のサッカー選手のフィジカルスタンダードを変える」というスローガンを打ち出しながら、1年目は十分な検証を欠いていたからだ。そこで2年目は科学的なエビデンスを踏まえた遺伝子検査を実験的に取り入れると、たちまち歴然とした効果があらわれた。

 今でもチームを、高負荷の筋トレに耐えられる遺伝子を持つグループ、持たないグループ、中間グループの3つに分け、それぞれストレングストレーニングの負荷や回数を変えている。遺伝子という動かしがたい根拠があるので、「選手たちも、腹に落とし込んでやってくれています」。

 そこまでして、いわきFCがフィジカルを鍛え上げるのは、なぜなのか。鈴木コーチは、意外な話をしてくれた。

「デカくて強いサッカー選手がめちゃくちゃ速く走れる。それだけでスタンドが沸くと思いませんか?」

【次ページ】 筋肉をつけると遅くなるという俗説はどこから?

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