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デカくて強い選手が速く走れたら。
いわきFCはサッカーの常識を壊すか。
text by
手嶋真彦Masahiko Tejima
photograph byKyodo News
posted2017/07/05 17:00
明らかに数年前とは一回り体の大きさが違ういわきFCの選手たち。フィジカル重視のスタイルは日本でも成功するのか。
筋肉をつけると遅くなるという俗説はどこから?
つまり、こういう話だ。プロスポーツはエンターテインメントであり、観衆を魅了してこそ価値がある。常に攻撃的に仕掛け、最後まで勝負を諦めない姿を見せて、地域の人々に希望や勇気を与える存在となり、スポーツを通じていわき市を活気溢れる都市にする。90分間、戦い抜き、走り抜く。
そのためにフィジカルを鍛え抜く。鈴木の仕事も結局は、いわきFCというクラブの理念と結び付いているのだ。
付け加えれば、“独り勝ち”するためのフィジカル強化などではない。各地域内で経済が循環するローカルなスポーツビジネスには、様々な地域が同時に発展できるという特長がある。共存共栄が可能であり、だからこそ目を覚ませと訴えているのだ。
そもそも、筋肉をつけると動きが重くなるという俗説は、どこから出てきたものなのか?
「昔のボディビルの印象が強いのでしょう。ベンチプレスで胸を大きくして、はい終わり。見た目には格好いいクルマだけど、効率よく速く走れるか? と言うと少し違う、そんなイメージです。どっちが良い悪いではなくて、ボディビルとサッカーのトレーニングはそれぞれ目的が違うということです」
ロナウドの出現で筋トレのイメージが変わった?
いわきFCでの鈴木拓哉の指導は、ただ単に選手の骨格筋量を増やし、走力を高め、出力をアップさせて、はい終わりでない。紙幅の都合により詳細は割愛するが、実際のサッカーの動きにリンクしやすくなるような、様々な工夫も凝らしている。
「クリスティアーノ・ロナウドのようなサッカー選手が出てきてくれて、仕事がやりやすくなりました(笑)。この人たち何なの? この身体でサッカー選手なの? そんな疑問を抱かせる身体をしてますからね。実際に蓋を開けてみると、かなりの筋トレをやっているわけです」
日本人アスリートでは誰がモデルに? 鈴木に具体的なイメージはあるのだろうか。
「ラグビー日本代表の山田章仁選手は、間近で見るとかなり太い。え、これで足が速いの? と驚くくらいに。アメフトの栗原嵩(たかし)選手も、上背は180センチほどでさほどないのに、デカいです。足もめちゃくちゃ速い」