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デカくて強い選手が速く走れたら。
いわきFCはサッカーの常識を壊すか。
posted2017/07/05 17:00
text by
手嶋真彦Masahiko Tejima
photograph by
Kyodo News
ぶっ壊そうとしているのは、この国のサッカー界の不思議な固定観念。
「日本人はフィジカルが弱い」という刷り込みであり、「筋肉をつけると動きが重くなる」という思い込みだ。
6月21日の天皇杯2回戦で、J1の北海道コンサドーレ札幌を下した「いわきFC」のパフォーマンスコーチ(ドームアスリートハウス※所属)、鈴木拓哉に驚きはなかった。
「観ていただいたまんまです。ウチの選手たちは倒れなかったし、走り負けてもいませんでした」
試合は90分を過ぎてからのほんの数十秒で、双方がそれぞれ2ゴール目を奪う劇的な展開となり、延長戦に突入。足が止まった札幌から、いわきFCが3つのゴールを奪い、5-2で決着がつく。J1のクラブから、J2でもJ3でもない、JFLでも東北1部でも2部でもない、実質7部(福島県1部リーグ)のいわきFCが収めた勝利は大番狂わせだと話題になった。
しかし、「まさかのジャイアントキリングだった」の一言で片付けてはいけない。日本サッカー界の諸君、このままで良いのかと、いわきFCは突き付けている。正面切ってのぶつかり合いを迂回するスタイルに、いつまで逃げているのかと。日本の常識は、世界の非常識ではないのかと。
筋トレの結果を争っているのは、アメフト選手たち。
驚くべきは次の証言だ。日本サッカー界の中では相当逞しく映るいわきFCの選手たちも、アメリカンフットボールの世界に混ぜれば、“もやしっ子”同然になってしまうと言う。本場アメリカではなく、ここ日本のアメフト界に混ぜてもだ。パフォーマンスコーチの鈴木が教えてくれた。
「例えば法政大学アメフト部の1年生にも、測定した数値ではまるでかないません」
1年生にも?
「はい。アメフト部の1年生のほうが、いわきFCの選手よりも明らかに強いです」
まかり間違えば「井の中の蛙、大海を知らず」となりかねない。J1のクラブを圧倒した程度では、喜んではいられない。
いわきFCのストレングストレーニングは、基本的に火水木の週3回。
「火曜日と水曜日は3時間弱の練習時間のうち、2時間はもらっています。木曜日は2時間半のうちの1時間半くらいです」
そこまでフィジカル強化に力を入れている日本のサッカークラブは?
「おそらく、ないです」