福西崇史の「考えるサッカー」BACK NUMBER
福西崇史がコンフェデで驚いたのは?
チリの“腕”の使い方を日本も盗め。
text by
福西崇史Takashi Fukunishi
photograph byAFLO
posted2017/07/05 11:30
コンフェデで縦横無尽のプレーを見せたビダルとサンチェス。彼らの情熱とスキルは、チリが世界と伍するためには不可欠な要素なのだ。
ドイツ相手にも臆さず“ボールを奪ってやるんだ”。
特に目についたポイントは「ハイプレッシャー」、「ワンプレーに対する気持ちの入れ方」、「身体の使い方の上手さ」。この3点ですね。
まずはハイプレッシャー。ブラジルW杯の頃から積極的に戦いを仕掛けてくるチームだったんですけど、今回のコンフェデでは“相手陣内でボールを奪ってやるんだ”という姿勢が強烈で、実際に相手を圧倒する時間帯がありました。
その中でも特に印象的だったのは、ドイツとの2試合でした。グループステージと決勝戦で対決することになりましたが、どちらも序盤はチリのペースでした。
チリの選手はとにかく相手のボールホルダーに激しく寄せていって、ボールを奪いに行く。そこで取れればすぐに攻撃を仕掛けるし、もしドイツの選手が何とかドリブルやパスでかわしても、別のチリの選手がまた激しく寄せてきて……の繰り返しでした。
早めに寄せて相手のプレーを制限するから、次の選手も狙いを定めてプレッシャーをかけやすい。言葉にすると簡単そうに聞こえるかもしれませんけど、どこかで“サボる”選手がいた瞬間、この戦い方は成り立たなくなる。それが貫けているのが素晴らしいですよね。
ワンプレーに対する気持ちの入れ方が凄まじかった。
この戦い方は、集中力と体力が必要になってくる。どちらの試合も後半に入ると動きが少し落ちて、ドイツが最終ラインの裏を狙う展開が増えました。それでも最後までチリは走り切ってカバーしていた。結果的にグループステージは1-1のドロー、決勝は0-1で敗れたことは事実なんですけど、決勝戦ではシュート数がドイツの8本に対してチリは21本、支配率もチリが60%を超えていて、ドイツを苦しめていたことは間違いない。
積極的な戦術をピッチ上で表現できたのは、選手たちにモチベーションの高さがあったからこそ。試合に向けての気持ちの入れ方も見逃せなかった。例えばビダルが決勝戦で負けた後の表情には、悲壮感を漂わせていたのが印象的でした。また試合中もチリの選手はシュート1本を外すとものすごく悔しがるし、微妙な判定には食ってかかるくらいの勢いだった。