酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
実は打点は、MLBでは評価されない。
運も打順も絡む人間臭い記録の秘密。
posted2017/06/22 07:00
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Kyodo News
特に昭和の野球に慣れ親しんだ世代の読者各位にご忠告申し上げるが、スポーツバーみたいなところで「あの選手は、打点をよく稼ぐね」などと言おうものなら、あなたは知らず知らずのうちに「けっ」とか言われている可能性がある。
「いまどきRBIがどうの、なんて!」
RBI(runs batted in)は打点のこと。今、MLBの新しい選手評価では、打点はほとんど重要視されていない。
新しい野球記録の流れである「セイバーメトリクス」では、従来の記録をもとに、いろんな数値を求めている。
得点、安打数、本塁打、四死球、盗塁、打率などは、数値を出すベースの素材として重要視されているが、主要なセイバーメトリクスの計算式に「打点」が入ることはまずない。
MLBかぶれのあんちゃん、いや違った、MLBを愛好するナウなヤングの皆さんは、選手評価にほとんど使われることのないRBIがどうのというおっさんのことも、打点と一緒に等閑視してしまうのだ。
打点は「運」に左右される人間くさいSTATSである。
しかしながら、打点は味わいがあって良い指標だと思う。
打点を挙げるには、いろんな手段がある。本塁打、タイムリーヒットから、押し出し四球、犠牲フライ、スクイズ、さらにはぼてぼてのゴロ、併殺崩れ、状況によっては失策による得点でも打点がつくことがある。
こういう融通無碍なところが、セイバーメトリクス研究者には気に入らないのかもしれない。
それに打点は塁上に走者がいるかいないかで大きく違ってくる。チームメイトの出塁率に大きく左右される。自分1人で稼ぐことができる打点は、本塁打だけなのだ。
だから打点に変わる新しい評価がいろいろ考案されているのだが、「運」は、野球の重要な要素だ。
「運」に大きく影響される「打点」は、人間臭くていいSTATSだと思うのだが。