酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
実は打点は、MLBでは評価されない。
運も打順も絡む人間臭い記録の秘密。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2017/06/22 07:00
茂木栄五郎の成績を見ると、彼をクリーンアップで使う選択肢も浮上しそうだ。そうすれば打点は一気に増えることになる。
楽天の打線は、懐かしの「流線型打線」。
ソフトバンクの3、4、5番は強烈だが、6番で打線が切れている。これが泣き所だ。
注目いただきたいのは楽天。なんとチームの打点王が2番、続いて1番なのだ。
選手でいえば、1番は今年、すでに12本塁打を打ち“巨大化”した茂木栄五郎、2番にはMLB時代から飛ばすことでは定評があったペゲーロが座っている。
楽天と対する投手は、1回表から、スラッガーと対戦しなければならないのだ。
過去にもこういう打線はなくはなかった。
1957年の西鉄ライオンズは、1番に長打も打てる“キャップ”こと高倉照幸をすえ、2番には前年首位打者をとったスラッガーの豊田泰光を据えた。
立ち上がりから点を奪いに行く積極打線、西鉄の名将、三原脩監督はこれを「流線型打線」と言った。この年、西鉄は見事優勝。
今年の楽天も、まさに「流線型打線」で、覇権を握ろうとしているのだ。
しかし、過去に2番打者で打点王をとった選手はいない。
1957年の西鉄、豊田の打点は59、2番打者としては多い方だが、打点王は西鉄の3番、中西太が100打点で獲得した。
やはり走者を塁において打席に立つ頻度では、2番は3番、4番にはかなわないのだ。
打点王を最も多くとった打順は?
1950年の2リーグ分立から2016年まで、打点王はタイ記録の選手も含めて、のべ142人が獲得している。
これらの打者の打順(そのシーズン最も多く座った打順)を調べた。
142人中、4番が97人。やはり圧倒的に多い。「4番には好機が回りやすい」ということもあるが、「一番いい打者は4番に据える」のが慣例にもなっている。歴史に残る大打者の多くは4番で打点王を獲得してきた。
3番が、36人。3番で打点王をとっているケースは、一定のパターンがある。そういうチームには、もう1人強打者がいて4番に座っているのだ。その典型がON。
王貞治は'64年から4年連続で打点王をとったが、この間ずっと3番。4番は長嶋茂雄だった。川上哲治監督は、どんなに王が打っても、4番の座から長嶋を外すことはなかった。
そして長嶋は王が4連続で打点王になった翌年の'68年から、3年連続で打点王をとる。この間、王は本塁打、首位打者の二冠を取り続けたが、打点で長嶋に負けて三冠王を逸しているのだ。
長嶋にとっては「打点王」こそが「巨人の4番打者」の矜持だったのだ。