スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
なぜ青木宣親はMLBで需要があるか。
車でも、試合中も欠かさない作業。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAFLO
posted2017/06/15 07:30
日米通算2000本安打は、アメリカでも大きく称えられた。彼が「仕事ができる選手」であることを誰もが知っているのだ。
「ノリ、投手に7球くらい投げさせてくれないか」
メジャーリーガーとしては、体は小柄。そのせいか、いつもいつも「正当な評価」を得るために頑張り屋さんは戦ってきた。メジャーに移籍する時だって、ミルウォーキー・ブリュワーズへポスティングで入団したのに、入団テストみたいなことを課せられた。
ヤクルト時代のヒットは1284本。メジャーに移ってからは717本(6月11日現在)。
この数字は日本人メジャーリーガーで3番目に当たる(トップはイチローの3046本。2番目は松井秀喜の1253本)。メジャー6年目で5つの球団のユニフォームを着たが、青木のようなタイプの打者に需要があるのが分かる。
その需要とはなにか? 私は打席での「インテリジェンス」だと思っている。
たとえば、青木にはこんな「宿題」が課せられる時がある。
「相手投手の調子が良くて、球数が少ないまま、5回くらいまでウチは点が入らない時があります。そんな時に『ノリ、投手に7球くらい投げさせるように粘ってくれないか』って言われたことがありますね」
そのとき、青木はその宿題を立派に果たしたが、結果は内野ゴロだった。
「でも、その時はダグアウトに戻った時に、ホメられましたよ(笑)」
相手投手のリズムを崩したり、小技が利くのが青木の持ち味で、こうした打者をひとり抱えておくのはチームの武器になる。
アストロズは無駄な選手を獲らない。もちろん青木も。
心強いのは、データを重視し、今季はアメリカン・リーグ西地区を独走するヒューストン・アストロズが青木を求めたということだ。最近の補強を見ると、アストロズは「ナンセンス」な選手獲得をしない。理詰めで考えた結果の補強だろう。
アメリカのメディアの中には、今季のアストロズを過去の「最強チーム」と比較する記事も出始めた。シーズン100勝も夢ではない。そこで青木がどれだけの仕事が出来るかが、今後のキャリアにとっても大きい。