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プーホルスとイチローの偉大さ。
16年前の新人王はどこまで歩むのか。
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byAFLO
posted2017/06/10 09:00
今季、プーホルスとイチロー試合前に抱擁を交わすシーンがあった。大リーグの一時代を築いた打者として、互いをリスペクトする関係である。
両リーグの新人王がともに殿堂入りするのは稀。
それでもプーホルスは、3000本安打(あと124本)と2000打点(あと141)に漕ぎ着けるのではないか。通算2000打点を記録した選手は、ハンク・アーロン、ベーブ・ルース、アレックス・ロドリゲス、キャップ・アンソンの4人だけだ。現役ではミゲル・カブレラが1579打点でプーホルスに続いているが、その差は280もある。
もうひとつ私が注目しているのは、新人王→殿堂入りという軌跡の再現だ。
ナ・リーグとア・リーグからそれぞれ新人王が選ばれるようになったのは1949年からだが、両方の新人王がともに殿堂入りしたケースは非常に少ない。
'56年新人王のフランク・ロビンソン('76年引退→'82年殿堂入り)とルイス・アパリシオ('73年引退→'84年殿堂入り)。
'67年新人王のトム・シーヴァー('86年引退→'92年殿堂入り)とロッド・カルー('85年引退→'91年殿堂入り)。
'77年新人王のアンドレ・ドーソン('96年引退→2010年殿堂入り)とエディ・マレー(97年引退→2003年殿堂入り)。
早熟の選手が長期間で高水準のプレーを見せる偉大さ。
これを最後に、ダブル殿堂入りのケースは出ていない。'82年ア・リーグ新人王のカル・リプケン・ジュニアは殿堂入りを果たし、'96年ア・リーグ新人王のデレク・ジーターは殿堂入りが確実だが、同じ年、ナ・リーグで新人王だったスティーヴ・サックスやトッド・ホランズワースは、そこまで大成しなかった。
早熟の選手が着実に成長し、なおかつ長期にわたって高い水準のプレーを持続するのは、それほどむずかしいことなのだ。