スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
プーホルスとイチローの偉大さ。
16年前の新人王はどこまで歩むのか。
posted2017/06/10 09:00
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
AFLO
6月3日、アルバート・プーホルスが通算600号本塁打を記録した。史上9人目の快挙だ。年齢は37歳と138日。出場試合数は2477で、打数は9341。ベーブ・ルースの最短記録(2044試合、6821打数)や、アレックス・ロドリゲスの最年少記録(35歳と8日)は破れなかったものの、堂々たる記録だ。イチローと同じ2001年にナ・リーグで新人王を取った選手だけに、よくぞここまで長い道のりを踏破してきたものだ、という感慨が湧き上がってくる。
2001年のプーホルスは、21歳の新星だった。161試合に出場して3割2分9厘、37本塁打、130打点、OPS=1.013の記録を残し、野球ファンを仰天させたのだ。大リーグに参入するなり、打率3割5分と56盗塁を記録した27歳のイチローも凄かったが、長打力と安打製造能力を兼ね備えたプーホルスの総合力は並外れていた。
カーディナルス在籍時代('01~'11)の11年間を振り返ってみると、3割2分8厘、2073安打、445本塁打、1329打点という圧倒的な数字が並ぶ。OPSが1点台以上のシーズンも8回。チームをポストシーズンに7度導き、ワールドシリーズ制覇は2回。彼自身もこの間、MVP3回、本塁打王2回、打点王と首位打者を1回ずつ手中に収めている。
10年総額2億5000万ドルの契約後、加齢に苦しんだ。
同じ時期のイチローは、3割2分6厘、2428安打、95本塁打、605打点の成績だ。両者の個性をはっきりと際立たせる数字というべきだろう。
あのころは、イチローの3000本安打や、プーホルスの600号本塁打がすぐにも達成されるような気がしたものだ。もちろん、話はそう簡単ではなかった。
マリナーズを去ったイチローが険しい道を歩まなければならなかったのと同様、'11年12月にエンジェルスと10年総額推定2億5000万ドルの巨大契約を結んだプーホルスも、年齢という魔物にじわじわと苦しめられる。'12年から'17年6月3日までの通算成績は、2割6分5厘、155本塁打、530打点だ。カーディナルス時代と比べると、力の衰えは隠しようがない。