福西崇史の「考えるサッカー」BACK NUMBER
乾貴士の成長、福西崇史が高評価!
「余裕があるから変化をつけられた」
text by
福西崇史Takashi Fukunishi
photograph byAsami Enomoto
posted2017/06/08 18:00
ドリブル突破だけでなく、フィニッシュでも力を発揮した乾。スタメンでもジョーカーであっても、スペインで揉まれた29歳は日本の新たな武器となる。
相手が防ごうとしてきても「余裕」があった。
一方で乾は、シリアの足が止まり始めたこともありますが、攻撃にリズムを与えるシーンが多かったですね。
それを可能にしたのが、最初に話した「余裕」という部分です。サッカーは自分がイメージしているプレーが全て思い通りにできるわけではないです。なぜならそれを防ごうとしてくる相手がいるから。そういった意味で前半の日本は、シリアの速いプレッシャーに少し対応しきれなかった。
ただ乾は今季、スペインのリーガ・エスパニョーラでレギュラーとして1シーズン戦いきった。レギュラーの座を守り切った自信もあるだろうし、選手としても大きく成長しているのを実感しました。
リーガで戦っていたからこそ“楽に感じた”のでは。
乾は日本人選手として初めてバルサ相手に2ゴールを奪ったことが注目されましたが、バルサ以外にもレアル、アトレティコのような強豪相手に戦っている。その中でバルサなら、メッシやイニエスタといった世界的な選手が相手になる。
その中で90分間通じてプレーしたことで、足元のテクニックや寄せの速さなどで大きな差を感じたはずです。ただその感覚があるからこそ、シリアのプレッシャーは“楽に感じる”くらいだったんではないでしょうか。
ちなみに僕も現役時代、レアルやブラジル代表と対戦する機会がありました。「グティって、恐ろしく上手いな……」「カカのドリブル、速すぎる」とか、今でも強烈な印象が残ってます(笑)。もちろんその感覚を忘れず、Jリーグや代表でのプレーに生かそうとしてましたよ。
シリア戦での乾のプレーを振り返ると、余裕があるからこその冷静な判断が多かった。インサイドハーフに入った本田がサイドチェンジを出せると見たらサイドに張るし、中央に入り込んでいくことで、同じ左サイドの長友がオーバーラップをしやすい形を作った。これは余裕を持って周囲の状況を把握できているからこそ。