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川崎・篠山竜青に涙を流させたもの。
Bリーグの成功を象徴する男の1年間。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKyodo News
posted2017/06/08 07:30
篠山竜青は、昨年まで決して得点の多いタイプのPGではなかった。1年で見違えた彼の成長は、数あるBリーグ効果の1つであろう。
3Pが49%入っていた、3シーズン前の自分。
好調の要因は何ですか。CSで活躍する秘訣は何ですか。
ファイナルにむけて勝ち進むごとに、篠山はそう聞かれていた。そして浴びせられる質問に、同じテンションでこう答えていた。
「レギュラーシーズンの最後のほうに、アシスタントコーチの佐藤賢次さんから『シュートを入れようとしすぎて余計な力が入っている。外さない程度にシュートを打てばいい』と言われて、自分のなかで少し、ひっかかりみたいなものがとれて、そこからシュートタッチがよくなっているかなと思います」
それが、メンタル面で調子を上げた要因。もちろん、技術的な面でも改良を加えている。
「2シーズン前に左足を骨折して、色々なことを見直すなかで、安定感を出す意味でシュートを打つ時のスタンスを広くしていたのですが、それをやめました。怪我をする前にNBLで優勝したシーズン('13-'14シーズン)は、3Pシュートが49%の確率で入っていたんですよ。そのときのVTRを見て、こっちのほうが良いんじゃないかなということで、スタンスだけではなく、リリースのタイミングも戻したんです」
篠山はパフォーマンスが良かった過去の試合の映像を手元に置いて、いつでも見直せるようにしている。そんな蓄積が、大事な局面で大きな意味をもった。
レギュラーシーズンが終盤に近づくにつれて、調子をあげていたのは3Pシュートの精度だけではない。ゴールへ向かう姿勢自体が変わっていった。
彼のパフォーマンスは一過性の好調ではなく、一連のプロセスは成長と評するべきものだ。
そして、篠山を成長に向けて駆り立てる確かな理由があった。
エースが不調だと負けてしまうチーム、だった。
1月の天皇杯。決勝戦で千葉に惨敗したあと、篠山はこんなことを考えていた。チームの大黒柱とエースに思いをはせながら。
「天皇杯の決勝戦で敗れてしまったイメージは非常に強く残っていて。辻がああいう状態(準決勝での怪我で絶不調)で、(リーグ得点王の)ファジーカスのシュートタッチが良くなかった。そして、それで終わってしまいました。一部の選手の調子が悪いと負けるというのでは、本当に強いチームじゃないと思います。自分がどれだけ得点を稼げるかというのが、リーグで優勝するためには大きなキーポイントになると思っています」
勝つことを求められるプロに、敗戦を無駄にすることは許されない。
負けたときに、何が出来るか。それは栃木のキャプテン田臥もシーズンを通して口を酸っぱくして問い続けてきたことだ。