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川崎・篠山竜青に涙を流させたもの。
Bリーグの成功を象徴する男の1年間。 

text by

ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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photograph byKyodo News

posted2017/06/08 07:30

川崎・篠山竜青に涙を流させたもの。Bリーグの成功を象徴する男の1年間。<Number Web> photograph by Kyodo News

篠山竜青は、昨年まで決して得点の多いタイプのPGではなかった。1年で見違えた彼の成長は、数あるBリーグ効果の1つであろう。

ファイナルに残る「自分の甘さ」への悔恨。

 バビチェビッチ氏に褒められたBリーグファイナルだが、篠山には「自分の甘さがあった」という思いが残っているという。

 第4クォーター(Q)残り1分26秒、1点のリードを奪われている状況でニック・ファジーカスとライアン・スパングラーが並んだところから、フリーになったスパングラーへ篠山はパスを送った。しかし、完全なフリーで狙ったはずのアリウープは失敗に終わった。このプレーは問題ない。シュートは外れることがある。バスケットボールの世界では、それは大きな問題ではない。

 ただ――。

 残り1分を切った時にも再び同じようなプレーを狙い、今度は篠山のパスミスでボールがラインを割ってしまった。

「北さん(北卓也ヘッドコーチ)からはどのようなパスを出すかまでの指示はありませんでした。ライアンとニックが2人縦にならんで……というプレーはセミファイナルから上手く行っていて。1回目はライアンのアイコンタクトから、失敗にはなりましたけど、バッチリ、タイミングもあった。

 2回目は、自分のためにも、ライアンのためにも成功させたいという想いが先に出てしまいました。そういうところが甘さかなと思います」

仲間のために戦うからこそ。

 実に篠山らしい選択だった。彼はチームプレーのバスケットを愛してきた。CSの準決勝でも象徴的な場面があった。

 副キャプテンながら篠山の1つ年上。日大時代の先輩でもある栗原貴宏がルーズボールにつっこみ、オフェンスリバウンドをもぎとり、最後に篠山が3Pを決めたときにこんなことを話していた。

「栗原さんのハッスルプレーだったり、そういう人のおかげで自分がボールを触るときは『これ、絶対入るな』という感覚にしてくれるというか。チーム全体で打ったシュートなんだと思います」

 そんな考え方をする選手だからこそ、次は自分だけではなく、悔しさを味わった仲間たちのためにも、優勝しようと本気で想える。そして、それが猛烈な努力をするための燃料となるのだろう。

【次ページ】 川崎のファンの前に立つと、目から涙が……。

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