濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「路上プロレス in 東京ドーム」大成功。
DDTがブチ上げた“本気のデタラメさ”。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2017/06/04 08:00
ホームベース上で鈴木みのるのパイルドライバーを食らい敗れた高木三四郎だが、大会の内容的には大成功だった。
5年越しの念願を実現させた“大社長”のビジネス感覚。
ちなみに観衆は主催者発表で「0人」。
実はこれ、ノーピープルすなわち無観客試合だったのである。路上プロレスは観客も移動しながら観戦するのが恒例だが、さすがに関係者通路やブルペンに入れるわけにはいかない。ドームで路上プロレスをやるなら、ノーピープルマッチしかなかった。
逆に言うと通常の興行を行なうには莫大な費用も必要になるから、ノーピープル路上プロレスだからこそのドーム進出だったのかもしれない。
ただ、この年間ベストイベント最有力候補は、単に思いつきでやってみただけのものではない。高木と鈴木は2012年、DDT15周年の日本武道館大会で対戦し、その試合後に高木がアピールしたのが「20周年、東京ドームでのリマッチ」だったのである。
その時点で、本当にドームで再戦すると信じていたファンはどれくらいいたのだろうか。
でも、少なくとも高木は本気だった。
ドームイベントは「新規会員獲得の目玉企画」だった!?
5年前から準備を進めていたし“ドームでやる宣言”は漠然とした野望ではなく「事業戦略を発表するのは企業として当たり前の姿勢ですよ」とも語っていた。
バカバカしいくらいの夢と、それを実現する行動力、ビジネスセンス。路上プロレスin東京ドームは、まさにDDTのパワーの結晶だった。それを、多くのファンが見た。無観客試合をどうやって見たのかと言えば、動画配信サービスDDT UNIVERSEの生中継を通じてである。
ノーピープルマッチでも自社制作の中継で見せることができる。ましてネット中継だから世界中で見てもらえる。これを「新規会員獲得の目玉企画」と位置づければ、開催費用もただの赤字ではなくなるわけだ。
こうしたシステム作りもあって、「史上空前のスケールとデタラメさ」(高木)に満ちた企画が実現したのだと言える。本気じゃなければデタラメなことはできない。