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“華麗なベルギーサッカー”は絶滅!?
リーグ優勝クラブに見る最新事情。
text by
ティエリー・マルシャンThierry Marchand
photograph byAlex Martin/L'Equipe
posted2017/06/01 17:00
パサーとしての類まれな才能だけでなく、得点能力も高いユーリ・ティーレマンス。今季のチーム優勝を支えた若き逸材だが……。
バイラーはどうやってクラブを立て直したのか?
アンデルレヒトの問題は、トップチームをめぐって起こっていた。そして、実り豊かな育成センターについては、誰も触れようとはしなかった。
とりわけトップチームと育成の連携がうまくいっていない近年においては、両者の関係を語るのはタブーですらあった。
昨年11月20日の時点でアンデルレヒトはリーグ6位に沈んでいた。トップのワレヘムとは8ポイント差で、両者の間にはオーステンデとヘント、クラブ・ブルージュ、シャルルロワの4チームがひしめき合い、7位のコルトレイクにも1ポイント差に迫られて、まさに尻に火がついている状態だった。
ベルギーでは、上位の6チームだけが優勝プレーオフに進むことができる。アンデルレヒトの悲惨な状況は、昨年の夏に900万ユーロの大金を投じてステアウア・ブカレストから獲得した選手ニコラエ・スタンチュの失敗のイメージと重なった。方向性を失ったチームは迷走していた。
監督のバイラーはその状況を把握したうえで、事態の鎮静化に務めようとしていた。
ヨーロッパリーグでは決勝トーナメントに勝ち進み、リーグ戦でもポーランド人ストライカーのウカシュ・テオドルチュクが量産するゴール(22得点でリーグ得点王を獲得)によってアンデルレヒトは勝利を重ねられるようになり、2月12日にはワレヘムを4-2と下して2位に、そして最終節にはついにリーグのトップに立ったのだった。
優勝しても誰も喜んでいない、その理由とは?
20世紀末から今日まで、アンデルレヒトが自身の“第二の皮膚”としているほど馴染みのリーグタイトルを、3年も手放すことなどこれまでになかった。しかも、'14年以来のタイトル奪還に成功したにもかかわらず、実は誰も手放しで優勝を喜んではいないという現実がある。
というのもジュピラーリーグの競争は年々激しくなり、今季はヘンクやスタンダールら名門クラブすらもプレーオフに進めなかったほどだからだ。
優勝は、接戦の中でたまたま勝ちを拾ったにすぎない。
またスタンドは空席が目立ち、クラブは初めて年間シート購買者数の発表を拒否した。クラブ運営を巡る様々な点で、まったく満足のいく優勝ではなかったのである。