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“華麗なベルギーサッカー”は絶滅!?
リーグ優勝クラブに見る最新事情。
posted2017/06/01 17:00
text by
ティエリー・マルシャンThierry Marchand
photograph by
Alex Martin/L'Equipe
ボスマン裁定(1995年)によるヨーロッパサッカーの自由化(選手の移動の自由)の波に乗り遅れ、久しく低迷が続いたベルギーは、アフリカや東欧などの若手選手の供給源(ベルギーのクラブを経て他国のビッグクラブに移籍)の地位に長く甘んじていた。若い世代の台頭によりベルギー代表が世界のトップレベルに返り咲き、クラブも活力を取り戻したのはここ数年のことである。
そのベルギーリーグを制したのは、同国で無二の伝統を持つRSCアンデルレヒトであった。3年ぶり34回目の優勝。今季はヨーロッパリーグでも準々決勝まで進み、名門復活を印象づけたように見える。だが、その実態は決して満足のいくものではなく、結果こそ出したものの多くの問題を抱えている。
『フランス・フットボール』誌5月23日発売号ではティエリー・マルシャン記者が、アンデルレヒトの現状を分析している。
1970年代にはロベルト・レンセンブリンクやルート・ヘールス、アリー・ハーン、フランソワ・バンデルエルストらを擁し、'80年代はモアテン・オルセンやエンツォ・シーフォ、エルウィン・バンデンベルグらの活躍で、ヨーロッパでも一世を風靡した古豪は、いったいどこに行こうとしているのか。
監修:田村修一
名門クラブを所有するのも、やはりビール会社。
ブリュッセルの名門クラブは、この週末に34度目のリーグ優勝を果たした。だが誰もが結果に納得しているわけではない。
ベルギーではすべてがビールで始まりビールで終わる。ビールこそはベルギーが世界に誇る文化遺産なのである。
サッカーの世界でもそれは同様で、アンデルレヒトを考えればいい。
長年にわたりクラブを所有しているのは、ベルギーで最も著名なビール製造業者のひとつ「ベルビュー」の創業者一族であるバンデンストック家である。ベルビューは1991年に世界最大手のビール会社で、世界第6位の大企業でもある「AB InBev」社に合弁吸収された。このカルテルの個人最大株主こそは、ベルギーで一番の大金持ちであるアレクサンドル・バンダムで、彼はまたアンデルレヒトの実質的な所有者でもあった。