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“華麗なベルギーサッカー”は絶滅!?
リーグ優勝クラブに見る最新事情。
text by
ティエリー・マルシャンThierry Marchand
photograph byAlex Martin/L'Equipe
posted2017/06/01 17:00
パサーとしての類まれな才能だけでなく、得点能力も高いユーリ・ティーレマンス。今季のチーム優勝を支えた若き逸材だが……。
その若き新監督の就任に、誰もが驚いた。
アンデルレヒトは今季、ジュピラーリーグ(ベルギー1部リーグ)優勝を果たした。「ジュピラー」はベルギーで最も売れているビールで、その製造元は「AB InBev」グループである。3年ぶりの優勝ではあるが、初優勝を成し遂げた1947年以来70年間で34度の制覇は、ほぼ2年に1度はタイトルを手にしていることを意味している。
大きな改革は、昨年の夏にゼネラルマネジャーであるヘルマン・バンホルスベークによっておこなわれた。
リスクは大きかったが、彼は賭けに勝ったのだった。
プロトやドフール、バンデンボーレ、スアレスらの世代が主軸の時代はすでに過ぎ去っていた。クラブが必要としていたのは、監督であると同時にすべてを変えられる人物であった。
しかしレネ・バイラーに白羽の矢が立てられたことには、誰もが驚きを禁じ得なかった。
43歳のスイス人、監督経験も限られていて、これまでに指揮したのはビンタートゥールにはじまりザンクトガレン、シャフハウゼン、アーラウ、ニュルンベルクといったクラブでしかなかったからだ。
3番目の監督は、チームに変革をもたらしたが……。
実はバイラーは、候補者の3番手にすぎなかった。
だが、本命のロベルト・マルティネスはアンデルレヒトよりもベルギー代表監督を選び、2番手のクロード・ピュエルもサウサンプトンFCの監督に就任してしまった。
その結果、就任の運びとなった3番手のバイラーは、強いキャラクターの持ち主だった。
アンデルレヒトには、アンソニー・バンデンボーレやバンサン・コンパニ、ロメル・ルカクといった優れたアフリカ系選手を輩出した育成の伝統がある。それを無視してチームの再建を図ったバイラーは、クラブ内の軋轢を一気に高めたのだ。