ミックスゾーンの行間BACK NUMBER
育成年代ゆえの粗さと勝負の丁寧さ。
日本がW杯初戦で見せた2つの顔。
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byKenzaburo Matsuoka
posted2017/05/22 17:30
堂安律、小川航基、久保建英という所属クラブで出場機会を得ている選手が結果を出した。世界は日本の攻撃に驚いたに違いない。
開始早々に直面した、想像以上の身体能力。
序盤は相手の身体能力に圧倒された。中盤の底に位置した南アフリカのプレーメーカーがシンプルに前線にボールを蹴るだけで、日本のDFは稚拙なボール処理や分の悪いスピード競争を強いられ、ゴールに迫られた。
「相手のスピードは、前半はFWをオフサイドにかけていても2列目から湧き出てくる攻撃だった。そこで対応に手こずりましたし、ラインを下げるか上げるかはっきりしなかった」
守備を司ったセンターバックの冨安建洋も、苦慮した時間帯をこう振り返る。7分には早々に失点を喫するなど、最悪の試合の入り方だったと言えた。
この時間帯、相手のアスリート能力の高さに日本の選手が面食らったことは否めない。それと同時に、世界大会でしか体感し得ない特有の緊張感の影響か、日本の選手たちは乱雑なプレーで自らリズムを手放していた。
育成年代の集大成だが、まだ荒けずりなのは当然。
育成年代の集大成とも言える大会。将来のトッププレーヤーの品評会のごとく、才能をきらびやかに発揮する選手たちがいる一方、当然大人のプロプレーヤーに比べればまだプレーは粗く、雑になる場面も散見される。育成段階を考えれば、そうしたイージープレーはまだまだ起きて当然。むしろこれからの伸びしろに目を向ける面白さがある。
しかし勝負となれば、また話は変わってくる。勝つためには、容易なミスは許されない。雑なプレーの連続では、勝てない。それは洋の東西を問わず、サッカーの常識だ。
南アフリカ戦の失点場面では、日本のDF陣はオフサイドの駆け引きミスから相手にゴールネットを揺らされた。そしてその後も、判断の甘い自滅プレーからピンチを重ねた。
彼らは「初戦で勝たないといけない」と口を揃えて語っていた。自分たちの将来性を担保に、今起きたミスを言い訳するような姿勢も見られない。
ならば、勝つために何をすべきか。その答えを、彼らは時間を追うごとにピッチで示していった。