ミックスゾーンの行間BACK NUMBER
育成年代ゆえの粗さと勝負の丁寧さ。
日本がW杯初戦で見せた2つの顔。
posted2017/05/22 17:30
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph by
Kenzaburo Matsuoka
粗雑さと丁寧さが、入れ替わるようにピッチに表れていった。
粗いプレーの連続は自ずとピンチを招き、自分たちのゴール前を何度も騒々しくした。細かいテクニックを重ねた連係は、アフリカ人選手の間隙を縫うように相手を崩していく。その俊敏さと正確さで、踊るように敵を翻弄した。
結果、日の丸を付けて戦った若きイレブンの戦いは、丁寧さが上回った。日本にとって実に10年ぶりの出場となるFIFA U-20W杯。大事な初戦で、南アフリカに2-1の逆転勝利を手繰り寄せた。
15歳FW、久保建英の存在が何かと注目を集める大会。メンバーは2020年の東京五輪に出場する世代でもある。久々のユース最高峰の世界大会出場というトピックも相まって、フル代表ではないにもかかわらず、その動静がニュースなどでも盛んに伝えられている。
苦しいグループに入り、苦戦が予想されていた。
5月11日から静岡・御前崎で始まった、大会に向けた合宿。まだ顔に若さが広がる10代の選手たちも、周囲の期待の高さと自分たちの可能性を信じ、日々こう連呼していた。
「とにかく、まずは初戦が大事になってくる。絶対に勝たないといけない」(堂安律)
「どんな大会でも初戦に勝てば、グループリーグ突破が現実的になる」(久保建英)
彼らは世界に勝負を仕掛けようとしている。狙うは、勝つこと、勝利。自らに暗示をかけるように口にする選手たちの姿が、印象的だった。
一方で、日本の苦戦が予想されていた。イタリア、ウルグアイという強豪国に加え、アフリカのサッカー先進国・南アフリカが同組に入った。現場が勝ち気な姿勢を強く示す一方、外からの冷静な視点では、厳しい試合の連続になるという意見が大勢を占めた。
迎えた勝負のとき。自他ともに、もっとも重要だと認識して臨んだ南アフリカ戦。そこで日本は、冒頭で記したような二面性を見せることになる。