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桐生祥秀は五輪なら1本目で失格!?
フライングは想像以上に重いのだ。
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byAFLO
posted2017/05/21 07:00
桐生の0.084というタイムは確かに「反応できる人間もいるかも」と想像できるラインではある。しかしフライングのルールは厳しいのだ。
五輪なら、1本目の時点で桐生は失格だった。
米国人代理人も「プロは厳しい世界。フライングして結果のない選手と4、5位の選手を自分が担当していたら、走った選手に次の大会のレーンをあげると思う」と手厳しい。
この代理人は今回のフライングについて、違う角度からも指摘している。
「1回目のフライングの際にヤングだけではなく、7レーンの桐生と6レーンのロジャーズも動いたように見えた。もしスタートが鳴る前に出ていたら、世界陸上などでは彼らも失格になるケースだよ」
そう言われて、ふと思い出した。
2015年北京世界陸上では男子110メートルハードル予選で2選手が「フライングによる失格」になっていた。フライングで2選手が同時に失格になるケースはとても珍しく、その時もは驚きの方が大きかった。しかしルールに則れば、当然のことだと納得した覚えがある。
空きレーンが増えると見栄えがよくない、という協定。
上海のレースの最初のスタート、桐生の反応時間は-0.066。8レーンのヤングにつられて桐生も出てしまった、いわゆる「もらい事故」のような感じだった。しかしスタートが鳴る前に飛び出している事実は変わらず、ルール上では残念ながらフライングとみなされる。
世界陸上や五輪などでは最初のスタートで失格になってしまうが、ダイヤモンドリーグでは、一度に数選手をフライング失格させると空きレーンができてレースの見栄えがよくないため、失格は一度に一人ずつという協定が交わされているという。
今回、桐生はその協定に救われた形となった。
2011年テグ世界陸上でのウサイン・ボルトのフライング失格が衝撃として記憶に残っているが、多くの選手が様々な大会で悔しい思いをしている。ダイヤモンドリーグでのフライングも珍しいことではない。独特の雰囲気や普段使い慣れないブロックなどの影響もあるのかもしれない。