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アイスホッケー男子代表への失望。
反撃しない0-4に未来はあるのか。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byAFLO
posted2017/05/18 08:00
歓喜に沸くイギリスの選手の後ろで、肩を落とす福藤。日本男子のアイスホッケーは永遠に世界トップレベルへと近づけないのだろうか。
「守りは通用した」という論法のナンセンスさ。
しかし、国際大会で、第3ピリオドに0-4からの逆転勝利など、通常は起こり得ない。あり得ないことを起こすには、あり得ない戦術を用いるしかないではないか。
昨年9月、平昌(ピョンチャン)五輪をかけた最終予選において、日本は「ディフェンス・ファースト」を掲げた。「守りは通用したが……」と一定の収穫を口にしつつ、3試合でわずか1点しか奪えずに惨敗した。筆者には、その論法がむしろナンセンスに思えて仕方がなかった。
攻守が一瞬にして入れ替わるアイスホッケーにおいて、攻撃は防御の一部であるはずだ。格上が格下に用いるのならまだしも、格下が格上に対してディフェンシブな戦術を取れば、かえって失点のリスクが高まりかねない。守り通すということの方が、むしろ高度な場合もある。
その矛盾に、おそらくほとんどの選手が気づいていた。特に、日本初のNHLプレーヤーでキーパーの福藤豊は、そうだろう。
「どうしても守る時間が増えますからね……」
どんなに優秀なキーパーであっても、防戦一方では、集中力と体力が続かない。
以前にも、得点力不足を嘆くのであれば、まず相手チームの倍、シュートを撃つべきだと記した。試合で打たずして、決定力が身につくはずがない。
イギリス戦までは得点を重ねていったのだが。
あれから7カ月――。
正反対の「オフェンス・ファースト」くらいの心意気で、攻めて、攻めて、攻めまくる日本の姿を期待していた。
ディビジョンBの参加国の中では、日本が21位と、もっとも世界ランキングが高かった。そこまでの4戦では、6-1(オランダ)、4-2(クロアチア)、6-2(エストニア)、6-2(リトアニア)と得点を重ね、少なからずその姿勢はうかがえた。
だからこそ同じような動きをイギリス戦でも見せてくれるものだと思っていたのだが、序盤から緊張しているのか、疲労しているのか、動きが重かった。
福藤は試合後、ため息交じりにこう吐いた。
「1ピリ、シュート2本ですからね……」
アイスホッケーの場合、枠内に行かなければシュート数としてカウントされない。したがって、印象としてはもう少し打っていたが、いずれにせよ、あまりにも少ない。
最終的なシュート数は、イギリスが38本だったのに対し、日本は約半分の20本にとどまった。