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アイスホッケー男子代表への失望。
反撃しない0-4に未来はあるのか。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byAFLO
posted2017/05/18 08:00
歓喜に沸くイギリスの選手の後ろで、肩を落とす福藤。日本男子のアイスホッケーは永遠に世界トップレベルへと近づけないのだろうか。
アイスホッケー代表には「負けっぷり」のよさがない。
「超攻撃型」に活路を見出し、昨年のリオ五輪で32年ぶりに五輪出場を果たした水球男子監督の大本洋嗣は、こんな話をしていたことがある。
「勝つことは難しいと思ったので、負けっぷりを求めた。いかに負けるかを考えた方が、次につながる気がして。10回やって10回善戦したって、メディアは取り上げてくれない。でも攻めまくっていたら、10回に1回、大金星を挙げられるかもしれない。そうしてたら、本当にたまに勝つようになってきたんです」
誤解を恐れずに言えば、今の日本代表に決定的に足りないのは、まさにこの「負けっぷり」のよさである。
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欧州の下部リーグのサッカーチームの中には、なかなか昇格できずとも、地元で愛されているチームがいくつもある。そうしたチームは往々にして、ビッグクラブには真似できないような個性的な戦術を用いているものだ。そして、善戦を目指すのではなく、惨敗覚悟であくまで勝利を目指す。
監督の鈴木は「戦いを欲しがる選手になって欲しい」と語っていたが、イギリス戦は特に戦わずして負けた印象ばかりが残った。
'22年の北京五輪を見据えた戦いだったはずなのに。
勝てない上に、このような「塩試合」を続けていたら、ファンがついてこない。ファンがつかない競技は強くならない。成長には、自分を追い込んでくれる厳しい目と、自分を奮い立たせる温かい目が必要なのだ。それらがないと、負けることに慣れてしまうし、自分の中に眠っている力を引き出してもらうという機会にも恵まれない。
今回の世界選手権は、実質的に、2022年の北京五輪がかかっていた。来年、再来年と、少なくとも2年間、グループAで勝負しなければ強化は到底間に合わない。昇格を果たしていたとしても、そこから五輪に出場するのでさえ奇跡的なことだった。
イギリスは世界ランキング24位の国である。そこに、まったく歯が立たなかったのだ。五輪には12カ国しか出場できない。北京五輪どころか、長野五輪のときのように開催枠を使わない限り、未来永劫、日本は五輪には出られないのではないか。