話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
俊輔が頭脳なら、川辺駿は心臓だ。
「自分が中心なのが一番いい」
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/05/18 11:00
磐田での期限付き移籍3年目は評価の証である。川辺駿に対する名波浩監督の評価は極めて高いのだ。
名波監督に誘われた磐田で、すでに3年目。
しかし、所属していた広島ではなかなか出番を掴めずにいた。
2015年、名波浩監督からのオファーを受け、出場機会を求めて磐田に期限付き移籍。シーズン後半はレギュラーになったが、リオ五輪の出場権をかけたU-23アジア選手権2016を戦う代表チームから名前が漏れた。
負けず嫌いの川辺は「悔しいし、情けなかった」と落胆し、同時に自分に不甲斐なさを感じたという。リオ五輪を経験した井手口、大島、原川力ら同世代のボランチたちは今やみなチームの主力になった。川辺が今年、磐田に3年目となる期限付き移籍の延長を決めたのは、自分の現状に危機感を覚え、より成長するためだった。
「広島では試合に出れずに練習だけだったんです。練習でも成長することはできるけど限度があるし、さらなる成長を考えると、自分が主力として試合に出ることが必要だった。磐田への移籍でそれが実現できました。今はこのチームの一員でやれているという自負がありますし、試合に出ているからこその責任感もある。そういうことを考えてプレーすることで成長できると思うし、徐々にいい方向に来ているなって思います」
「俊さんは自分が持った方が相手は怖いとわかってる」
もともと攻撃的センスがある選手だが、今季はプレー面、特に攻撃面でJリーグでも屈指の「生きる教材」がチームに加入してきた。中村のプレーやアイデアは独特だが、一緒にプレーすることで理解し、改めて驚かされることが多いという。
「俊さんは、技術が高いですし、チームで一番クオリティのある怖い選手。それを自覚しているので、たとえばワンタッチでいけるところでも簡単にはたかない。周囲の選手が持つよりも、自分が持った方が相手は怖いというのを分かっているんです。そういう部分を、劣勢の試合で自分も出していけたらなって思いますね」
磐田でプレーヤーとして多くの試合を経験し、天才を見て学ぶことで多くのことを吸収してきた。その手ごたえを感じている一方、試合をする度に課題が出てくる。だが、それは練習だけの環境では決して体験できなかった、うれしい“痛み”だ。