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女性観客が8割の「タカガールデー」。
意義あるイベント、NPBは球団任せ。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2017/05/17 07:00
スポーツ界での社会貢献活動は一般的になってきているからこそ、統括する組織にはそれを取りまとめる能力が期待される。
乳がんで妻を亡くした鳥越コーチからの言葉。
いずれのベースにも、リボンの模様が描かれている。これは、乳がんの撲滅、早期発見と早期治療のための受診を啓発する「ピンクリボン運動」のシンボルマークなのである。
ホークスではこの女性向けイベントに併せて、ピンクリボン運動への取り組みにも力を入れており、今年で9回目を迎えた。コーチ、選手によるリーフレットの手渡しが行われ、入場者全員に配布される「タカガールデー・プログラム」にも乳がんセルフチェックシートや乳がんに関する記事が掲載されていた。また、今年は新たに、乳がん検診車をヤフオクドームに呼んだり、さらに選手たちが試合で着用するキャップ「Sh」マークの横に「ピンクリボンのシンボルマークが特別に刺繍されたりもした。
この取り組みに特別な思いを抱いて毎年参加しているのが、鳥越裕介一軍内野・守備走塁コーチだ。今年もたくさんの来場者へ、マイクを手に自らの思いを声を震わせながら伝えた。
「私も、約10年前に妻を乳がんで亡くしました……。(言葉に)詰まりますね。これくらい、本人も周りもきついです。乳がんは早期発見、早期治療で治せる病気です。今日家に帰ったら、どうかお母さんに『大丈夫?』と言ってください」
「チラシを手渡しすれば目を通してくれると思う」
鳥越コーチは言う。
「どれくらい伝わっているのか、活動をすることでどのくらいの変化があるのかという実感は正直分かりません。だけど、チラシを手渡しすれば目を通してくれると思うし、いつ自分の周りに起こるか分からないこと。他人事だと思わず、女性はもちろん、男性の方も家族と話をするなどして、ぜひ検診に行ってほしい。1人でも多くの人が助かってほしいと思っています」
あんな思いをするのは、俺だけでいい。そう言って目を潤ませた年もあった。
乳がんは現在日本人女性の11人に1人が診断される時代だが、早期発見と適切な治療で治ると言われている。