“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
洗練されたサッカー小僧・堂安律。
U-20W杯、ドリブルよりシンプルに。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2017/05/15 07:00
海外メディアから「期待の若手」として報じられたこともある堂安。そのポテンシャルを世界中に知らしめる時は、来た。
最後の最後にパワーを持って、決定的な仕事をする。
「自分が点を獲るためには、まずシンプルにボールをはたいて周りを使ってから、リターンを要求する。ポンポンとボールを動かしながら前に進んで行った方が、より自分の能力が生きると思ったんです」
堂安の言う「自分の能力」とは、ドリブルでボールを運んだり、2、3人かわして行くことだけではない。スプリント力もあるし、アジリティーやフィジカルにも自信がある。ワンタッチのコントロールも下部組織で磨き上げてきたものだ。今こそ、それらの能力を活かすべき時なのだ。
「最初からパワーを使うのではなく、最後の最後に自分が(相手にとって)怖いところにパワーを持って入り込んで、決定的な仕事をする方が良い。もちろん自分で行くことも悪いことではないのですが、パスを使いながら、次のプレーで点が取れるポジションに潜り込む。そこでボールが戻ってくれば、点が獲れる。それが点を獲るために、自分にとって最良の方法だ、と」
堂安はスプリント力を上げるためのトレーニングも入念に行っており、だからこそ、そのプレースタイルが自分の絶対的な武器となるという確信が芽生えた。
リーグ戦3得点は全部、トップスピードで放ったもの。
この確信が、明らかにプレースタイルを変えた。彼が出場する試合を見ると、1試合におけるドリブルの回数が減り、無理に仕掛けるシーンが見られなくなった。オフザボールでは細かい動き直しを繰り返しつつ、ボールが受けられるポジションを模索する。
ボールが来たらまずは前を向いている味方に預けてから、自らは一気にスピードアップをして相手にとって危険なアタッキングエリアに入っていく。これまではそこへの走り込みで失速する傾向にあったが、ここ最近はトップスピードで入り込んでいるからこそ、質の高いフィニッシュワークができているのだ。
彼が積み上げたリーグ戦3ゴールは、すべてトップスピードから放たれたシュートだった。ラストパスが自分の下に出てきた時、体勢的にも優位なポジションを取れていた。
「入りきれるんですよね、抜いたときに。自分の横に相手DFが並走するのではなく、相手よりも前に入れている。DFに自分の背中を見せられているんです。だからこそ、自分の目の前にいる次のDFやGKをしっかりと見ることが出来る。それは大きいですね」