沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
1頭マークは武豊の最も得意な展開。
天皇賞・春、一騎打ちの行方は?
text by

島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2017/04/29 08:00

黒光りする馬体に王者の風格を漂わせるキタサンブラック(左)と、額のダイヤモンドが印象的なサトノダイヤモンド。さあ、決戦だ。
サトノ対策か、「自分の競馬」か。
おそらく、馬体を離して一気に来られないよう、ロングスパートで持久戦に持ち込んだうえで、いつでも馬体を併せられるよう、ギリギリまで内埒沿いにはつけない、といった戦術をとるのではないか。いや、そうではなく、他馬がどう出ようとお構いなしに、騎乗馬の力を最大限に引き出す「自分の競馬」、つまり、王者の競馬をすべく、あえて早めに内埒に頼らせ、突き放す手に出るかもしれない。
いずれにせよ、あと一歩のところでかわされた有馬記念の雪辱なるか、武の手綱さばきが見ものである。
サトノ陣営の「胸を借りる」という表現は本音か。
対するサトノダイヤモンド(牡4歳、父ディープインパクト、栗東・池江泰寿厩舎)も、仕上げにぬかりはない。
この馬の強さに関しては説明不要だろうが、対キタサンという点で、ひとつ不安要素を挙げるとしたら、有馬記念のときはキタサンが57キロを背負っていたのに対し、3歳だったこの馬は55キロと、2キロのアドバンテージがあったことだ。今回は同斤の58キロ。しかも、キタサンは背負い慣れて結果を出しているのだが、サトノダイヤモンドにとっては初めての斤量になる。
もうひとつ気になるのは、池江調教師が「ベストは2000mから2400m。適性距離を超えていると思う」とコメントしていることだ。菊花賞の前も同じように距離に対する不安を口にしながら圧勝したので、ひょっとしたら他馬陣営に対する揺さぶりの意味合いもあるのかもしれない。
しかし、「こちらは大関。胸を借りる立場で横綱(キタサン)に挑む」という言葉は本音だろうし、外目の15番枠を引いたことから、絶好位のポジションをとりに行く横綱相撲ではなく、後方に控えて道中は余計な動きをせず、勝負どころから一気に進出するのではないか。馬体を併せたら、キタサンがもうひと伸びすることはわかっているので、有馬記念の再現のような競馬が理想だろう。