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マルケスの走りは“勝利 or 転倒”。
MotoGP序盤の番狂わせを検証する。
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2017/04/21 07:30
アルゼンチンGPにて。転倒後、すぐに立ち上がってコース外に去っていったマルケス。怪我が無かったことはなによりだが……。
ライバルのロレンソとロッシもミスを多発。
その反省もあり翌'16年は初心に戻り、どんなときも完走することを目標に、自分の走りが100%できなくても我慢に我慢を重ねるレースを心掛けた。
その一方、'16年はマルケスとチャンピオン争いをするロレンソとロッシがミスを繰り返して自滅していくパターンも増えており、この数年のMotoGPクラスの戦いを象徴する波乱に満ちたシーズンになっていた。
このシーズン、チャンピオン争いをするライダーたちにとっては勝つことも大事だが、それ以上に、ミスをしないことがもっとも大事なことになってしまっているようにさえ見えた。
実は、こういう時代になった背景にはレース界における「電子制御の進化」という要因がある。
電子制御が進んだ時代にあっても……マルケスは速い!
マシンが2ストローク500ccだった時代から4ストローク1000ccのMotoGPクラスになってからは、電子制御が年々驚くほど進化していき、ライダーの想定外の転倒は減り続け、完走率が非常に高くなっている。
レースプラン通りに走れば転倒もせず、完走できてしまう時代。どのライダーもマシンもイコールコンディションともいえる状況下で、さらに抜きん出た走りを見せた者だけが優勝できるとなると……途端にリスクの高い走りを求められることになってしまうわけだ。
マルケスは、アルゼンチンGPを終え、MotoGP74戦目にして38回目のPP獲得(通算66回)と圧倒的なスピードを誇る。
この数字は、ロレンソの158戦で39回(通算65回)、ロッシの290戦で54回(通算64回)を遥かに凌ぐもので、いかにマルケスの能力が高いかを示している。
そのマルケスが、決勝では「我慢のレース」に徹しているという現実とは、どういうことなのか?