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マルケスの走りは“勝利 or 転倒”。
MotoGP序盤の番狂わせを検証する。
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2017/04/21 07:30
アルゼンチンGPにて。転倒後、すぐに立ち上がってコース外に去っていったマルケス。怪我が無かったことはなによりだが……。
ライダーとして一番嬉しかった、昨季の王座。
スペインの地元セルベラで行った祝賀パレードでは、地元ファンとともにチャンピオン獲得の喜びに浸り、こう語った。
「125cc、Moto2、MotoGPとこれまで5回タイトルを獲得してきたが、1番思い出深いのは、弟のアレックスと兄弟揃ってチャンピオンを獲得した'14年シーズン。
ライダーとして1番嬉しいのは、文句なく、今年('16年)だね。ライダーとしてやるべきことをやったし、大きく成長したことを実感した」
125ccクラスとMoto2クラスでチャンピオンを獲得。20歳でMotoGPクラスにデビューした'13年は、ウィンターテストから驚くべき速さを発揮していたが、とにかく完走することを目標に一戦一戦を大事に走っていた。
最大のライバルとなったホルヘ・ロレンソを相手にチェッカーを受けることを最優先するという無我夢中のシーズンではあったが、終わってみれば、6勝を含む16回の表彰台を獲得。史上最年少優勝、史上最年少チャンピオン獲得という大偉業を達成するなど、まさに無欲のチャンピオン獲得のシーズンだった。
「勝つか転倒か」という過激な走りを……。
翌'14年は、ホンダRC213Vの仕上がりも良かったのだろう。マルケスは開幕10連勝と破竹の快進撃を続ける。その後も優勝記録を伸ばし、シーズン最多優勝記録達成となる全18戦中13勝という大記録で2年連続でチャンピオンに輝いた。
しかし、開幕10連勝を挙げてからというもの、マルケスの戦い方には大きな変化が訪れていたのも事実だ。
それは「勝つか転倒か」という過激な戦い方だった……。
何が何でも勝ちたいという強い気持ちは大事だが、それが雑なレース展開となっていた。'15年はチャンピオン争いを繰り広げるも、転倒リタイヤが多く、結局自滅していくというレースが増えたのである。