月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
山田哲人に履正社監督からメール……。
プチ鹿島3月のスポーツ新聞時評。
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph byHideki Sugiyama
posted2017/04/03 16:30
ホームランではないことを塁間で伝えられた瞬間の山田。こういったハプニングもまた、WBC、ひいては野球の妙味である。
「野球を嫌いになることだけはやめてほしい」
さらに6日後。
2次ラウンドのキューバ戦(3月14日)で活躍した山田哲人を1面で伝える「スポーツ報知」にはこんな記述があった。初戦の幻のホームランに関してあらためて山田のコメントを載せているのだが、そこには、
《あの子は何も悪くない。だから、野球を嫌いになることだけはやめてほしいです。できれば、また応援に来てほしいと思います。次はもっと飛ばしますから。》(3月15日)
6日前の「日刊スポーツ」へのコメントにさらに「次はもっと飛ばしますから」が追加されていた。
驚いた。
だって、あの幻のホームラン当日に出回った「きっちりスタンドインさせなかった自分が悪い」「次もスタジアムにグローブ持ってきて欲しい」という創作ツイートに、本人のコメントがどんどん追いついているのである。まさにポスト真実!
WBCとスポーツ新聞は格段に相性がいい!
ちなみに「報知」がこのコメントを伝えた日、「日刊スポーツ」に興味深い記述があった。山田の恩師である母校・履正社の岡田監督の言葉である。中学生へ向けた山田のあのコメントを岡田監督は読んだという。
《「あまりにいいコメントやったんで『お前ほんまに言うたんか』ってメールしましたわ」と豪快に笑った。山田の答えは「はい。また球場に来てほしいので」だった。「うれしかった。あんなことを言えるなら、今年も大丈夫」。》
山田のコメントは記者の「忖度」なんかでは決してなく、ちゃんと自分の言葉だったことがわかる。不思議な展開だった。
それにしても、この「幻弾」ネタは、美談も大得意であるスポーツ新聞にハマった。もっと言えば、WBCの十八番である「国際大会の公正さよりも目前のドラマ性」がまたも炸裂したエピソードだったのだと思う。
WBCとスポーツ新聞は格段に相性がいい。そんなことを再度実感したのです。
以上、3月のスポーツ新聞時評でした。