月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
山田哲人に履正社監督からメール……。
プチ鹿島3月のスポーツ新聞時評。
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph byHideki Sugiyama
posted2017/04/03 16:30
ホームランではないことを塁間で伝えられた瞬間の山田。こういったハプニングもまた、WBC、ひいては野球の妙味である。
ベーブ・ルースと少年の約束HRがあるなら日本も……。
いくらなんでもひとつの「ミス」でここまで叩かれなければいけないのか――。
ベーブ・ルースと少年の約束のホームランがあるなら、日本のスターたちよ今日だけは絶対に勝ってくれ、少年を全力で救ってくれ……と思いながら私は試合を観た。少年がまたグラブを持って野球場に来れるように。
すると、試合当日にツイッターで「山田哲人のコメント」というのが流れてきた。
「きっちりスタンドインさせなかった自分が悪い」「次もスタジアムにグローブ持ってきて欲しい。今度はちゃんとホームラン打ちます」というような内容だった。そのあとこれは「創作」であるという指摘のツイートもまわってきた。山田哲人のホームランをめぐり、もうなんだかわからない騒動になったのである。
山田哲人の言葉に、とにかく感動した。
話はこれで終わらない。
その2日後、「日刊スポーツ」にこんな記事が載った。
「キューバ戦幻弾 山田から少年へ」(3月9日)
ここでキューバ戦の直後の山田の様子が書かれていた。
《何が起きていたのか理解したのは、試合後だった。喜びにわくロッカー室で着替えているときだった。何となく無音のテレビに目をやると、あのシーンが流れていた。》
そして記事は翌日の山田の気持ちへ。
《この日の朝、歯を磨きながら、ふと丸刈り頭のことが気になった。スマートフォンを手に取った。「うつろな表情で、フードをかぶったまま。青ざめていた」とあった。落ち込んでいると知った。だから伝えたかった。「僕は全然気にしてない。だから野球を嫌いにならず、またグラブを持って応援に来てほしい」。絶対に打ちたかった。》
なんだかすごい。「野球を嫌いにならず、またグラブを持って応援に来てほしい」と、山田本人の口からこのコメントが出たのだという。