沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
武豊が見つけたキタサン最強の形。
大阪杯完勝で、凱旋門もGoサイン。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2017/04/03 11:15
有馬記念で敗れたサトノダイヤモンドとの再戦は天皇賞・春になる予定。真の現役最強馬はどっちだ。
どこまで行っても2着以下との差は詰まらない。
その武が、3コーナーを回りながらチラッと後ろを確認し、ロングスパートをかけた。
「(キタサンの)手応えがよかったので、後ろを待つことはないかな、と。普通の馬なら仕掛けが早いですが、この馬なら、と思って行きました」
スパートといっても、武は、手綱で軽く促しただけだ。キタサンは4コーナーを回りながら楽にロードヴァンドールをかわし、2番手で直線へ。
ラスト200m地点の手前で先頭に立つと、追い込んでくる馬たちをまったく寄せつけず、先頭でゴールを駆け抜けた。
どこまで行っても、2着以下との差は詰まることはなかっただろう。
勝ちタイムは1分58秒9。上がり3ハロンは34秒3。33秒台の脚で追い込んできた馬も数頭いたが、キタサンに馬体を並べかけることすらできなかった。
これぞ横綱相撲。本命馬が、これほど危なげない内容で勝ったGIは、オルフェーヴルのラストランとなった2013年の有馬記念以来ではないか。ディープインパクトも、いつも最後は圧勝だったが、道中は後方に控えていたので、もっとハラハラさせられた。
オルフェやディープ級でなければ……。
流れやメンバー次第で、自分がハナに立つこともあれば、このレースのように番手につけることもある。驚異的なロングスパートで、前にプレッシャーをかけながらあっさり抜き去り、後ろの馬たちの瞬発力を封じ込む。
他馬はどうすればこの馬を負かすことができるのか。
道中、つかず離れずマークして、仕掛けをひと呼吸かふた呼吸だけ遅らせ、一気にかわしにかかるしかなさそうだ。実際、ステファノスがそうした競馬を試みて2着に来たのだが、4分の3馬身という着差以上に、勝てる感じのまったくしないレースだった。
となると、オルフェやディープ級の馬でそうしたレースをするほか、今のキタサンを負かすことはできないのではないか。
そう思わせられるほどの圧勝であり、また、勝利に導いた武の、相棒に対する強い信頼が感じられるレースであった。