マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
福井工大福井の戦いに広がった妄想。
「リードしない」戦術は有効かも。
posted2017/03/27 18:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Kyodo News
1回戦で、福井工大福井が仙台育英と当たった。
宮城の……というより、すでに「東北の雄」ともなった仙台育英は、毎年のように甲子園にコマを進める全国屈指の強豪であり、夏はすでに全国準優勝を2回、センバツでは2001年に準優勝に輝いている。
この春だって、戦力は充実している。超高校級の走・攻・守に加えて、投までも光る西巻賢二主将を軸に、例年より長打力はなくてもきっちりつなげる機能型の打線と、左2人、右1人の多士済々の投手陣を擁して、このセンバツにやってきた。
そんな手ごわい仙台育英を相手に回して、いったい福井工大福井はどう戦おうというのだろうか? どんな試合運びにもっていくのか、とても興味があった。
そういう福井工大福井だって、2年連続でセンバツにやって来た。地元・福井では、敦賀気比と共に常に覇を競う位置にある。そして、なんといっても、高校野球監督生活15年、その前には社会人野球監督(三菱自動車川崎)として全国優勝している知将・大須賀康浩監督に鍛え込まれた腕利きが揃うチームである。
福井工大福井の攻めに、妙な違和感。
試合は初回、仙台育英の2点先取から始まった。
内野ゴロを1つはさんで4連打、その間およそ5分間。時間をかけずに点を奪う。強いチームは点を取るのが速い。強豪らしい攻め口であっという間に2点リードして“流れ”をつかんだように見えた。
福井工大福井が4番・山岸旭左翼手の大アーチで同点にしたのは4回だ。
さあここは、2死ではあるがじっくり攻めて一気に逆転を……と思って見ていたら、続く打者が意外なほどあっさりとセンターへ打ち上げてチェンジ。同点までで終わってしまった。
何かが引っかかった。
浪商→法政大→三菱自動車川崎、勝ちに執着する野球を体のすみずみまで刷り込まれてきた大須賀監督に仕込まれた選手たちだ。試合中盤で同点に追いついたのなら、もっといやらしく粘るはずじゃないのか……。