マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
福井工大福井の戦いに広がった妄想。
「リードしない」戦術は有効かも。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2017/03/27 18:00
2回戦では健大高崎と15回を終えて7-7の引き分けで再試合となった福井工大福井。こちらもシーソーゲームだった。
8回の代打も不思議な感覚だった。
試合は6回、仙台育英が2点を奪って、再び4-2とリードする。
このままなんとなく終わってしまうのでは。そう思われた終盤8回、福井工大福井の攻撃だ。
ヒット3本に死球、四球。ドドッと音を立てるように攻め込んで、4-4と再度同点に持ち込んだ福井工大福井。さらに2死一、二塁なら、逆転したうえに“ビッグイニング”にして一気に突き放す。そんな展開をイメージした。
死球、四球が続いたあとだ。今度こそ、じっくりボールを選んで、疲れの見えてきた仙台育英の先発・長谷川拓帆をつぶしにくるだろう。
と、代打が送られて、これもあっけなく空振りの三振に終わる。なんか、へんだなぁ……。
こんなはずがない。もっと何か仕掛けてくるはずだ。流れは福井工大福井にある中での代打に違和感があった。
今日は3回凡退しているとはいっても、同点にしてなおも2死満塁。おそらくこの試合、最高にプレッシャーのかかる場面に代打。信頼するに足りる腕前の持ち主なのかもしれないが、それにしても高校生。過酷過ぎる場面なのではないか。
そんな、ないない、甲子園でそんなこと。
そして、結果は空振りの三振。
ちょっと、へんだなぁ。ん……? えっ、もしかして……?
そんな、ないない、甲子園でそんなこと。そこまでやるわけはない。ある“妄想”が湧いて、そんなはずないとすぐに打ち消した。
ともあれ、4-4の同点のまま、9回の攻防に持ち込んだ福井工大福井。2死1塁から四球とヒット2本で、今度はあっさりと2点を奪い、最終回にしてこの試合初めてのリードを奪うと、その裏を抑えて逃げきってみせた。