マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
福井工大福井の戦いに広がった妄想。
「リードしない」戦術は有効かも。
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安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2017/03/27 18:00
![福井工大福井の戦いに広がった妄想。「リードしない」戦術は有効かも。<Number Web> photograph by Kyodo News](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/b/3/700/img_b3596799cb0b1a71123058c19a499d49212460.jpg)
2回戦では健大高崎と15回を終えて7-7の引き分けで再試合となった福井工大福井。こちらもシーソーゲームだった。
リードするのは最後だけ、と決めていたのでは……?
事前に申し上げておくが、ここから描かれていることは、すべてが私の妄想である。
「ええか、最後の最後まで、同点のままでついていけ」
福井工大福井・大須賀監督は、大阪の出身である。
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「ええか、絶対にリードしたらあかん。ウチがリードしたら、どないなると思う? 育英を本気にさせたらあかん。本気勝負になったら、向こうのほうが力は上や」
聞いている選手たちの目がだんだんと丸くなる。
「ええか、8回まではピタッとついていけ。ただし、決して“前”に出るな。取っても同点までや。追加点が取れそうな場面でも、『退け!』のサインが出る。よお、覚えとけ。8回までピタッとついていって、最後の最後で1歩だけ前に出て、パッと逃げ切りや。ウチが育英に勝てるとしたら、その展開しかない。ええな」
第4コーナー回って、最後の直線。
先頭を走る本命馬のすぐ後ろ。ピタッと貼りつくように追いながら、粘って粘って、最後の最後でハナ差でかわしてゴールイン!
「そんな筋書き通りきまるなんてことめったにないけど、強い馬に勝つには“これ”しかないねん」
ずっと以前、ある調教師のこんなつぶやきを読んだことがある。
ホントにあったとは思っていないけれど。
点を取るのが“攻め”ならば、点を取らない攻めがあってもいいんじゃないのか。そういう攻めだって、ありそうじゃないか。
甲子園というギリギリの舞台で、まさかホントにこんなことがあったとは思ってはいない。
めちゃめちゃネガティブ、こざかしい、卑怯者……。ホントにあったら、いろんなことを言われそうだが、前へ出ないリスクを負いながら相手を追っていく戦いもまた、“正々堂々”としたものではないか。
福井工大福井がリードを意図的に避けたとはさすがに考えづらいが、ルールからはみ出さないのであれば、野球って「なんでもあり」でいいんだと、私は妄想の中で思ったものだ。
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