ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER
ハリルJの決意、野心、自信の核。
本田にも、今野にも明確な理由が。
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byYohei Osada/AFLO SPORT
posted2017/03/22 08:00
精神的な面でも大いなる貢献が期待される本田。W杯予選では、ピッチ内だけが戦いの場所では無いのである。
監督がタッチできない領域を、本田や川島らに託す。
川島はリザーブリーグに出場しているとはいえ、本田も長友も長らく試合のピッチに立っていない。実戦感覚を欠き、コンディションも未知数の彼らをそれでも招集したのは、たとえプレーで限定的な役割しか果たせないにせよ、それでも彼らはチームのために存在感を示すことができると判断したからに他ならない。またプレー以外でも、彼らならばチームにプラスをもたらせる、からだろう。
期待されるのは「リーダーシップ」と「コミュニケーション能力」である。
メンタル・精神力が最重要と位置づけられた試合で、'06年ドイツワールドカップのフランス代表がそうであったように「ともに生き、ともに死ぬ」チームの一体感を、わずかな時間でいかに作りだすか――これは、監督にはタッチできない領域の事柄なのである。彼らの果たすべき役割は、非常に大きいのである。
日本人は試合における即興的な対応力は高くない。
もうひとつの論点が、今野泰幸はじめ倉田秋、高萩洋次郎らベテラン勢の招集である。
そこにはベテランであれば、たとえ新たな招集であろうとも代表ですぐに力を発揮できるという、ハリルホジッチの思い込みがある。
だが、若手かベテランかに限らず、自然に身体を動かすのではなく、頭で考えてサッカーをプレーする日本人の即興的適応力は決して高くはない。
ハリルホジッチもそこは織り込み済みで、彼らを起用する際には、極めて具体的な役割を求めることになるのだろう。そうであるならば、今野の守備力や第2列への攻撃の絡み、倉田の縦への推進力や高萩の構築力も有効な武器になる。
「彼なしのチームは考えられない」とハリルホジッチが全幅の信頼を寄せる長谷部誠の出場が無くなった今、今野には長谷部に代わる中盤の守備の要としての役割が課せられるかもしれない。