話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
千葉の特殊な守備を支える西野貴治。
元G大阪のエリートが楽しむ新環境。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/03/18 09:00
10代の頃にガンバのトップチームに昇格し、西野貴治は将来を嘱望されていた。ケガで遠回りしたとはいえまだ23歳、逆襲の準備は整った。
千葉で明らかに体が厚くなり、当たりが強く。
初めての移籍だったが、環境の変化は西野に刺激を与えた。千葉はパーソナルジムと契約しており、選手個々に合わせたトレーナーの指導を受けて筋力がアップ。また、線が細いという指摘を受け、食生活も改善した。毎日食べたものを携帯カメラで撮って栄養士に送り、体作りを行った。その結果、ガンバ時代よりも体重は5、6キロ増え、80キロ前後に。明らかに体が厚くなり、人に当たる力強さが増している。
「体が大きくなったけど重さは感じないですし、すごく調子がいいです」
肉体的な改良が進行し、西野をさらにタフなセンターバックに変貌させているのが、ファン・エスナイデル監督の戦術だ。前線から強烈なプレスをかけ、西野ら3バックは高いラインをキープする。ハイプレッシャー、ハイラインで相手を押し込む戦術だ。
「ラインを高く保つのはキャンプからやり続けているんですけど、最初はうしろに大きなスペースができるんで不安がありました。でも、開幕して試合をしていくと勝てているし、『やれるんちゃうか』ってチームがすごくいい雰囲気になっています。もちろん試合では裏が気になりますけど、そこはGKがケアしたり、裏にボールが出たらしっかり自分らがついていくようにしている。もう必死ですよ。そこで恐がって引いたらすぐに代えられるんで。監督、恐いですから」
攻守に運動量が必要で、3バックも長い距離を走る戦術。
相手に裏を狙われるのは、ある程度想定内なのだろう。それでも絶対に「引かない」というのが外国人監督らしい。「走りつづけろ」と言い続けたオシム元監督に通じる厳しさがある。
だが、この戦術は非常に体力を消耗する。攻撃の時は3バックがワイドに広がり、相手を押し込むと3バックも相手陣地内に入って全体をコンパクトにする。攻から守への切り替えの時は、ラインが高い分全力で長い距離を戻ることになる。常に上下動してラインコントロールを行い、裏にボールを出されると全力でついていく。攻守においてのんびりしている暇はまったくない。