Jをめぐる冒険BACK NUMBER
大久保が前線から、林が後ろから。
2人が問題視するFC東京の「甘さ」。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAFLO
posted2017/02/07 07:00
大久保嘉人が川崎にもたらしたのはゴールだけではなかった。FC東京でも、チームにポジティブな緊張感を与えられるか。
GK林も、昨季までいた羽生もFC東京の「甘さ」を指摘。
同じ意味で、GK林もキーマンになり得る存在だろう。
トレーニングや練習試合を見れば、最後尾から絶え間なく発せられる林の声に気づくはずだ。敵として見ていた東京の甘さを、林は見抜いていた。
「DF陣がバラバラになる、ユニットになれていない感じがしていた。例えば森重がポカをしたら、森重に強く言える存在がいないといけないし、今回嘉人さんが入ったけど、嘉人さんは今まで決めていたから言えないじゃなくて、ダメなものはダメって、みんなが言える状況にしないと、強いチームにはなれない。うやむやにするんじゃなく、そういうことを言える環境になるように、うまくリードしていきたいと思います」
昨シーズンまで東京に在籍していた羽生直剛は、ときおりチームの雰囲気を「シティボーイ風」と喩えることがあった。それは、「洗練された都会の集団」という意味ではなく、「おとなしくてヤワな集団」という自嘲気味な揶揄だった。
だが、前線から大久保が叱咤し、後方から林が鋭く目を光らせることで、チームの雰囲気は変わりつつある。そこに、首都クラブが脱皮する可能性が感じられる。
クラブの目標は弱気だが、明らかに過去最強の布陣。
「変化」を意識しているのは、ベテランだけではない。今年23歳になる中島が言う。
「僕らの世代が試合にどんどん出ないといけないと思う。今年は変化の年なので、年上の選手たちに頼るのではなくて、僕らが東京を変えられるように頑張っていきたい」
クラブは公の目標として「ACL出場圏内」を掲げている。ちょっと弱気なのは、優勝を掲げた昨シーズンが9位に終わったからだろう。過去を振り返れば、代表クラスをこれだけ獲得した例はなく、クラブ史上、最強の布陣と言っていい。
新加入選手がもたらす「厳しさ」が、首都のクラブにどのような化学反応をもたらすのか――。昨シーズンの3強、鹿島アントラーズ、浦和レッズ、川崎フロンターレがACLとの両立に苦しむ間に、東京がスタートダッシュを成功させても驚きはない。