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W杯が48カ国に増えることについて、
世界最高のサッカー誌は、こう考える。 

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エリック・シャンペル

エリック・シャンペルEric Champel

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posted2017/02/01 11:00

W杯が48カ国に増えることについて、世界最高のサッカー誌は、こう考える。<Number Web> photograph by RICHARD MARTIN

前回のブラジルW杯は、スタジアムやインフラ建設の問題などこそあれ、経済的には成功した、という評価がなされているらしいが……。

収入の95%をW杯に頼るFIFAの現状。

 FIFAにとってワールドカップは金の卵を産むニワトリである。

 収入の95%をワールドカップに頼り、今もFIFAが12億ユーロの余剰金を持ち、サッカー発展途上国にさまざまな開発プログラムの資金援助ができるのもワールドカップのおかげに他ならない。

 そのワールドカップが、およそ200あるFIFA加盟国の約4分の1が出場できるように拡大されるというのだ。

「サッカーはユニバーサルなスポーツであり、規模拡大は極めて当然だ」とコンゴ民主共和国の理事、コンスタント・オマリは言う。

「サッカーをヨーロッパと南米だけに限定してはならない」とは、FIFA新会長ジャンニ・インファンティーノの口癖である。

 だが、これらの美辞麗句の裏に、表には出にくいもうひとつの現実が隠されているのを忘れてはならない。

FIFAが各国協会にバラ撒く援助金の実態とは。

 FIFA会長選挙の際にインファンティーノは、2026年までに40億ドル(約37億5000万ユーロ)を各国協会に再分配することを約束した。

 FIFAの財政にとって常軌を逸した危険な公約であると、彼に反対する勢力から激しく批判された。

 メディアに流出した信頼できるレポートによれば、48カ国に拡大することでFIFAは、2018年ロシアワールドカップに比べ6億500万ユーロの増収が得られるという。テレビ放映権が4億7400万ユーロ、マーケティングが3億4700万ユーロの増加が見込まれる。12会場の大会運営費の増加を差し引いても、利益は大きく増える。少なくとも理論上はそうだ。

 インファンティーノもそうした経済則をよく理解している。2019年の会長選挙で再選されるためには、各国協会にFIFAからの援助金が満遍なく行き渡らねばならないことも。

「それもまた政治の一部だし、決して汚いものではない」と、上述の情報筋も認めている。

 だが、それが本当に生産的であるのかどうか。ワールドカップに出場することが、その国のサッカーのレベルを上げると、確信を持って言い切れるのか。地域予選は単に、本大会へのパスポートにスタンプを押すだけのものになってしまうのか……。

【次ページ】 参加国拡大に強く反発した、欧州のビッグクラブ達。

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