フランス・フットボール通信BACK NUMBER
W杯が48カ国に増えることについて、
世界最高のサッカー誌は、こう考える。
posted2017/02/01 11:00
text by
エリック・シャンペルEric Champel
photograph by
RICHARD MARTIN
世界中に大きな波紋を呼び、賛否両論の議論を巻き起こしたFIFAのワールドカップ48カ国拡大決定。日本でも大々的に報じられたが、サッカーに限らずこの種のテーマ――スポーツのピッチ外での重大事件――を論じようにも、情報も乏しくどんな論点で分析すればいいのかわからないというのが、いまだメディアを含めた日本の現状である。
『フランス・フットボール』誌1月17日発売号でエリック・シャンペル記者が、48カ国拡大の功罪、それも主に罪の部分を分析している(記事「ラディション・シルブプレ!(会計をお願いします!)~ワールドカップの拡大について~」)。
記事そのものは網羅的で、関連性のありそうな要素をとりあえずすべて列挙した印象はあるが、何が問題であり、どう考えればいいかを知る上では示唆に満ちている。
ちなみにシャンペルは、フィリップ・オクレールとともに同誌で「カタールゲート事件」(W杯開催地誘致に関するFIFAとカタールの不正疑惑)を担当しており、「カタールゲート事件」のために『フランス・フットボール』が『レキップ』紙から引き抜いた優秀な記者である。
監修:田村修一
W杯の拡大という大義名分と、その裏事情。
2026年からワールドカップ出場国が48カ国になった。この前代未聞の拡大は、純粋なスポーツ的要求に応えているばかりではない。政治・経済的利害とも深く結びついている。
1930年7月13~30日にかけておこなわれた第1回ワールドカップ。開催国ウルグアイが優勝したこの大会に参加したのは13カ国。ヨーロッパからは4カ国が出場した。それからほぼ1世紀を経た2026年夏には、48カ国が決勝大会に出場する。この拡大は、ひとつにはサッカービジネスの大幅な需要増大と、テレビ放映権の天文学的な上昇の帰結である。
48カ国は3カ国ずつ16のグループに分かれてリーグ戦をおこなう。ベスト32から始まる直接対決を含めると試合総数は80になるが、大会期間は32日とこれまでと変わらない。これが全体のコンセンサスを得る切り札となった。
1月10日にチューリッヒで開かれた33人のメンバーによるFIFA評議会では、サッカーの普遍化の大義名分のもと全会一致でこの案が採択された。だが、オープンマインドによる合理的な選択に見えるこの決定は、FIFA会長選挙や地域政治といった現実的な問題と強く結びついているのだった。