書店員のスポーツ本探訪BACK NUMBER
シャビは確かにバルサを愛していた。
強烈な家庭と、理想のチームと。
posted2017/01/30 08:00
text by
濱口陽輔Yosuke Hamaguchi
photograph by
Wataru Sato
2015年5月23日。
FCバルセロナ(以下バルサ)から移籍することが決まったシャビの、退団セレモニーでのスピーチ。
「こんにちは皆さん、ありがとう。僕は今日、世界で最も幸せな男であり、17シーズンここにいました。家族、妻、友人、そしてここにいる人全てに感謝の気持ちを伝えたいです。あなたたちは熱狂的で素晴らしいです。何を言われようと僕たちは世界最高のクラブです」
シャビの自伝『シャビ バルサに生きる』は2010年に書かれた。結局、バルサで引退する夢は叶わなかったが、愛情に満ちたバルサでの24年間だったことが分かる。
筆者は、2006年から2007年にかけてバルセロナに住んでいた。1年と少しの期間だったが、カンプノウで開催される試合は全て観戦した。
その頃のバルサのメンバーで現在も残っているのがメッシとイニエスタだけになってしまったのは寂しいが、10年以上経っても活躍する選手が2人もいるのは素晴らしい事だと思う。
当時のバルサにはロナウジーニョがいてプジョルがいて、そしてシャビがいた。
現地に住んで実感した、バルサという特異な存在。
バルサは他クラブと比べて特異な存在である。
“スポーツと政治は別物”とはよく言われるが、バルセロナでは両者は密接に関係している。
バルセロナという街はカタルーニャ州の州都であり、カタルーニャ語を話し独自の文化を形成している。独立意識が高い地域で「自分はスペイン人ではなくカタルーニャ人(カタラン人)だ」と言う人も多い。
彼らにとってバルサは誇りであり、ライバルであるレアル・マドリーやエスパニョールとの関係は100年を超える歴史の中で作られたのだ。