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誰も知らない韓国サッカーと徴兵制度。
鳥栖・金民友はなぜ日本を去ったのか。
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byKenzaburo Matsuoka/AFLO
posted2017/01/04 08:00
サガン鳥栖で2010年からプレーしていた金民友。退団時にはチームの主将も務めていたほどの中心選手だった。
兵役に行く期限を延長することはできる。
厳密に言えば、金民友がJリーグで過ごした7年間は「兵役に行く期限を延長していた」という状態だった。これはJリーガーを含め、ごく一般的に行われていることでもある。この機会にぜひ知ってもらいたい、韓国文化の話でもある。
韓国の法律上では、あくまで基本的には「成人=満18歳で、兵役に行く」ということになっている。
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<大韓民国 兵役法 第2章 第一国民役 編入>
第8条 大韓民国の国民である男性は、18歳から第一国民役(注:現役兵)に編入される。
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ただし、以下の条件で入隊の期間を延長できる。
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<大韓民国 兵役法 第8章 兵役期間の延期ならびに減免>
地方兵務庁長は徴兵検査を受けた者のうち、次の各号のうちいずれか1つに該当する者(中略)に対して、徴集や召集を延期できる。
1.高等学校以上の学校に通う学生
2.研修機関で定められた過程を履修中の学生
3.国威宣揚のための体育分野優秀者
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一部のサッカー選手には3が適用されることもあるが、近年Jリーグに渡ってくることの多い若い選手は、1の事例を適用することが多い。
Jリーグクラブに移籍する際のビザは当然受け入れ側のクラブが発給申請を行う。一方、これとは別に「学生」としてのステイタスを残すこともある。
筆者が知る事例では、韓国で大学学籍を持つか、あるいは日本で語学の専門学校などに登録し、プロサッカー選手とは別の「学生」として延長申請を行うことができる。
かつて朴智星は、京都サンガ時代に大阪の大学に学籍を持っていた。韓国代表歴のある金民友は1か3かは定かではないが、いずれにせよ入隊時期を延長してプレーしていたのだ。
尚武の他に、警察庁チームもあるが、軍人になる選手も。
ちなみにサッカーのトッププレーヤーが、27歳というタイミングを過ぎてしまった際には、2部リーグに所属する警察庁のチームでプレーするか、あるいは一般国民と同じく軍人として普通に服務することになる。
前者の警察庁チーム(2部)行きをあえて選手が選択するケースもある。2部という下位リーグでのプレーとなり、尚武よりも悪い環境(練習場が人工芝、医療体制が整っていない)を強いられるが、一方で外出の自由度が高いといったメリットもある。すると家族のいる選手には好条件にも映る。
後者の、一般的な軍隊服務では、'00年代に1部リーグでプレーしたGKが「一般の徴兵期間を経験したため、2年間サッカーから離れた状態から復活した」としてちょっとした話題にもなった。
そういう意味でも、尚州尚武に入団できることは、トップアスリートの証でもあるのだ。