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生え抜き愛と大型トレードは悪相性?
プロ野球で選手の移動が少ない理由。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byGetty Images
posted2016/12/19 07:00
198cmと長身のセールは、長い腕を横手から繰り出してボールに角度をつける。5年連続2ケタ勝利で、今季も自己最多タイの17勝を挙げた。
「生え抜きが減ったら愛情が減る」とは言うが。
「主力選手の出入りが激しくなって生え抜きが少なくなったら、ファンのチームに対する愛情は減るだろう!」
その理屈は分かるが、プロ野球チームの究極の目標は「生え抜き選手を揃えること」ではない。洋の東西を問わず、プロ野球チームの使命は「優勝すること」だ。そして、その可能性を少しでも高めるため、毎年のようにポストシーズン、日本ならクライマックスシリーズに進出するチームを編成することである。
日本プロ野球のファンは我慢強い。即効性のある補強が外国人選手の獲得ぐらいのものだと承知の上で、高校や大学のスター選手の入団を温かく迎え入れ、主力選手に育つのをひたすら待つ。それはそれでとても健全なことだろう。
だがそこまで熱狂的なファンが、他球団の主力選手をトレードで獲得することの効果や面白さをまったく知らないのは、とても不幸なことだと思う。
来年クリーンナップに1人大物が加わったら……。
想像してみて欲しい。たとえば今年セ・リーグ3位に入ったものの、チーム打撃成績が下位だったDeNAのような球団が、過去に獲得したドラフト上位指名の選手を数名一気に放出して、オリックスのT-岡田外野手や西武の中村剛也内野手のような主力選手をトレードで補強するところを。
「日本のプロ野球を知らないやつが、何を無責任な」
そう思われるかも知れないが、大リーグのファンは四六時中、そういうことを考えて楽しんでいる。今もまた、レッドソックスやマリナーズやカブスのファンは、今オフのトレードについて様々な形で語り尽くし、来春の開幕を楽しみにしている。野球のない季節も常に愛するチームの動きに注目し、そのエネルギーを開幕に向けて高めていくのである。
「ストーブリーグ」という名のもとに。