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生え抜き愛と大型トレードは悪相性?
プロ野球で選手の移動が少ない理由。
posted2016/12/19 07:00
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
Getty Images
あれは中学生の頃だったろうか。当時、阪神の田淵幸一捕手が、真弓明信内野手、若菜嘉晴捕手らとの2対4のトレードでクラウンライター(現・埼玉西武)ライオンズに移籍した時、随分と驚いた記憶がある。
それは当時の田淵さんが“阪神の顔”だったからで、真弓さんや若菜さんらの実力も何も知らないで、「主力選手を手放したら、アカンのちゃう?」と単純に思ってしまったからだった。
だから、それから10年近く経った頃、当時ロッテで2年連続三冠王の落合博満内野手が、牛島和彦投手を筆頭とする1対4のトレードで中日ドラゴンズに移籍した時は、「どっちが得なんだろう?」と冷静に考えた。
世代を隔てた2つのトレードに絡んだ4球団中、3球団が獲得した選手を主力にその後優勝していることを考えれば、それらのトレードは成功だったと言える。トレードの損得は本文の内容とは違うのでこれ以上言及しないが、ここで大事なのは、主力選手のトレードが私のようなプロ野球ファンを単純に楽しませてくれたという事実である。
大リーグでは、エースや最多安打クラスが続々と。
そして大リーグではこの冬、主力選手のトレードが相次いでいる。
ホワイトソックスのエース左腕クリス・セールが、若手の有望株4人との1対4のトレードでレッドソックスに移籍した。今年のナ・リーグ最多安打を記録したダイヤモンドバックスのジーン・セグラ遊撃手(と他2選手)は、先発タイワン・ウォーカー投手とケテル・マーテイ遊撃手との2対3のトレードでマリナーズに移籍した。
2015年、ロイヤルズのワールドシリーズ優勝に貢献した守護神ウェイド・デービス投手は、若手のホルヘ・ソレア外野手との1対1のトレードでカブスに移籍した。
彼らのトレードは、成立前から様々な形で報道された。SNSを中心に「ナショナルズがホワイトソックスの左腕セールと、2013年のナ・リーグMVPでパイレーツの(アンドリュー・)マカッチェン外野手の同時獲得を狙っている」などと頻繁に情報が流され、メディアとファンが一体となって野球界を盛り上げたような形になった。
もっとも、大リーグのストーブリーグが過熱するのは今年に限ったことではなく、毎年のように選手のトレード話が熱を帯びて語られる。