岩渕健輔、ラグビーW杯と東京五輪のためにBACK NUMBER
岩渕GM、女子15人制は最後の大仕事。
2017年のワールドカップ予選が開始!
text by
岩渕健輔Kensuke Iwabuchi
photograph byAFLO
posted2016/12/12 17:00
リオ五輪でも活躍した桑井亜乃は15人制にも代表入りしている。世界の経験をチームに還元することが期待される。
それぞれに特化しつつある7人制と15人制。
本来であれば、それぞれ独立して代表チームを強化していくのが望ましいことはいうまでもありません。男子のラグビーで顕著になってきているように、15人制と7人制のラグビーは、似て非なるものになってきているからです。
しかし日本のラグビー界では、15人制と7人制の代表を分けて強化できるほどの余裕はありません。選手の数だけでなく、指導者の人材や活動予算、そして強化のために費やせる「時間」という面でも、あらゆる「リソース(資源)」が限られているのが実情です。
先日、上梓した新刊「準備する力 ラグビー日本代表GMのメソッド」においても詳述したように、これは男子の代表でさえ同様でした。
7人制のメンバーを15人制に合流させる策。
そこで鍵になるのが、リソースの共有です。
男子の場合、私が立てた強化プランは、ワールドカップイングランド大会までは15人制代表の強化にひたすら傾注。そこで培ったものをベースに、大会が終わると同時に7人制代表の強化に特化し、リオ五輪の本大会に間に合わせるというものでした。
一方女子の場合は、このプロセスを逆にしました。具体的に言うなら、リオ五輪までは、7人制代表の強化を集中的に実施。4年間で1000日を超えるような合宿を通して鍛え上げられた選手たちの多くに15人制のチームでもプレーしてもらい、アジア・オセアニア地区予選を突破できるようにしていくことでした。
つまり、男子の場合は15人制の代表から7人制の代表へ、女子の場合は7人制の代表から15人制の代表へと、休む間もなく活動の場を切り替えていくことになります。
選手たちは肉体面だけでなく、精神面でも大変だったと思いますが、男女の代表とも、実によく耐えてくれました。事実、女子の15人制代表は昨年、アジアにおける最大のライバルだったカザフスタン代表にも、ついに勝利を納めるまでになりました。これは女子の15人制日本代表にとって、初の快挙でした。