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久保建英の世界観は今もバルサ目線。
欧州を目指すのと戻るのはどう違う?
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2016/12/01 12:00
バルセロナの哲学は、久保建英の中にしっかりと根付いている。みなぎる自信のおおもとは、やはりそこにあるのだろう。
強気な発言で目立った本田や柿谷との違い。
なぜ、こんなに落ち着いているのか。久保はまだ何も達成していない。将来が約束されたわけでもない。それでも、すでににじみ出ているものが存在する。
それは、トップアスリートにとって何物にも代えがたい、自信。久保にはその萌芽がすでにある。
自信と鼻っ柱の強さは、どこか隣り合わせである。
サッカー界でも、例えば本田圭佑は昔から世界を食ってやるかのような成り上がり思考が原動力になってきた。10代から『同世代に敵なし』と才能を嘱望されていた柿谷曜一朗や宇佐美貴史といった選手たちも、強気な姿勢を表向きに見せるのが特徴だった。
久保は、これとは真逆の流れを行く選手かもしれない。
サッカー強国ではない日本で生まれ育った選手には、世界へ出ていく上でまだコンプレックスが大なり小なりある。仮にこちらにその意識がなくても、欧州にいるサッカーエリートたちは、アジア人や日本人を間違いなく軽視する傾向にある。
日本から世界へ。そのベクトルは挑戦であり、時には虚勢を張るぐらいの強気なマインドが必要だ。
バルサから日本へ、という逆輸入。
ただ、久保には日本人特有のコンプレックスがない、もしくは限りなくゼロに近い。なぜならば、彼は10歳で世界的強豪クラブ・バルサにスカウトされ、実力を磨き、エリート集団の中でも特別な選手の1人とみなされてきたからである。
欧州から日本へ。そのベクトルは当然、挑戦ではない。久保はスペインで自信を携えて戻ってきた。それが虚勢が必要のない、確かな手応えである。
これまで、久保が飛び級でのプレーで特に課題として挙げてきたのはフィジカル面だった。プレー強度やスピードは、年上、もしくはプロの中ではまだ足りていない。一方、技術面については、あまり不安視していない様子も垣間見える。強いパスをいとも簡単に足元に止めて見せる。相手を引きつけてラストパスを出し、また1対1で仕掛けて抜き去る。それらを久保は「自分が得意としているプレーなので」と、一言で片付ける。