詳説日本野球研究BACK NUMBER
一塁到達タイム、球速、勝利数……。
大学野球終盤戦を数字で大分析。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/11/27 08:00
明治大が優勝した明治神宮大会。ただ漫然と試合を見るのではなく数字をチェックしてみると、チームの規律や選手層が見えてくる。
明大はよく走るだけでなく、柳と星の二枚看板がいた。
よく走ったのは明治大、日本大、桜美林大、関西大の4校で、いずれも全国大会で盤石の実績を積んできた伝統リーグの優勝校ばかりだった。上武大は島田海吏、小豆澤誠、鳥巣誉議、市根井隆成、宮川海斗など俊足を揃えながら、ピッチャーが打席に入るスタイルに戸惑ったのか、自分たちの戦いができていないように見えた。それでも準決勝に進出したのだから強いことは間違いないが。
なお優勝した明治大は、柳裕也(中日1位)と星知弥(ヤクルト2位)を揃えた投手力で他校を圧倒した。柳は私が見てきた中では毎試合、ストレートが最速146kmを計測していたが、この大会は低調で、関西大戦が5回まで投げて最速144km、準決勝の上武大戦が7回まで投げて142km、決勝の桜美林大が4回まで投げて137kmだった。
持ち味は変化球とコントロールなのでストレートの速さは関係なさそうだが、柳が好投するときはその前提にストレートのキレのよさがある。しかし、この大会ではキレも速さもいまいちの状態が続いた。
ただ、柳がいまいちでも中盤まで試合を作れば、あとには星が控えている。この陣容の分厚さが他校にはない明治大の強みである。星は「明治神宮外苑創建90年記念奉納試合」にも東京六大学選抜のメンバーとして先発し、ヤクルト相手に2回を1安打に抑えている。このときは持ち味であるストレートは最速149kmを計測し、2回には山田哲人から148kmのストレートで空振りの三振を奪っている。
このときの調子のよさが明治神宮大会でも維持されていた。上武大戦は8回からリリーフして2回を無安打、3三振、決勝の桜美林大戦はやはり5回から柳をリリーフし、5回を2安打、5三振に抑え、ストレートは最速152キロに達した。桜美林大はエース佐々木千隼(ロッテ1位)が5回に制球を乱して4失点したのが最後まで響いたが、初出場して環太平洋大、日本大を倒して決勝に進出したのは立派。関東5連盟第1代表の勢いを存分に見せつけた。
過去10年、全国大会で最も勝利しているのは……。
明治大の優勝で、過去10年に限った明治神宮大会での勝利数上位ランキングは次のようになった。
1位:明治大11勝3敗
2位:早稲田大8勝3敗
3位:亜細亜大7勝2敗
これに、夏の全日本大学野球選手権大会を合計した勝利数の上位ランキングも紹介しよう。
1位:上武大21勝13敗
2位:東洋大20勝2敗
3位:早稲田大20勝3敗
過去10年に限れば最も全国大会で勝ち星を挙げているのは上武大だった。大学野球は完全に戦国時代に突入した。