サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
本田圭佑が窮地で得た新スタイル。
「試したいこと」の答えを聞いた。
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byTakuya Sugiyama
posted2016/11/17 12:10
中央に入ってくるのは本田圭佑の悪癖と言われている。しかし、彼が輝くのが中央であることも間違いないのだ。
酷評のオマーン戦、本田はあるトライをしていた。
一方、本田の手応えは違っていた。試合後のコメントである。
「試したいことは試せたかなと思います。とりあえずは良しという試合だった。一番やりたかったことは、自分の立ち位置にいつもとは少し違う部分を付け加えたところ。それはできた。トップ下に入ったキヨ(清武)も同じようなことを考えていたから、うまくいった部分があった。選手のポジショニングが良かったので、サイドで起点を作れたし、敵の間の中途半端なポジションでチャンスも作った。それは日本の戦い方のストロングポイントの1つ。正確に言えば、選手同士のサポートの位置がすごく大事だと、あらためて感じた」
指揮官の評価、そして世間の酷評の理由は明らかである。それは、本田の動きの重たさにある。
ミランで試合に出場できていないという事実がある。そのことによって、試合勘が鈍り、プレーのキレを欠く。そうしたステレオタイプな視点は本田にも注がれた。実際、本田がオマーン戦で機敏で繊細なプレーができていたかと言えば、トラップが流れてしまったり突破を阻まれたりと、鈍重さが目につく場面があった。
中央に寄った時にこそ本田は輝く。
しかし、である。
本田が戦前から試したいと言っていた“何か”。その“何か”へのアプローチが建設的に行われなかったかと言えば、それは違う。彼はこの試合で、明らかな変化を見せていたのだった。
オマーン戦のプレーをいくつか振り返ってみる。
15分、右サイドから左サイドに大きくサイドチェンジが入り、ボールは中央の清武に。この展開の流れの中で、本田はスッと右寄りの位置から中央左寄りにまで移り、清武との距離を詰める。そして最後はペナルティエリア内に侵入し、清武からパスを受けた。
サイドアタッカー本来の仕事もこなしている。19分には右サイド深く侵入した位置から大迫勇也にクロス。ヘディングシュートが決まったが、これはオフサイドの判定で取り消された。さらに22分、プレーが一時ストップした場面では清武や大迫、酒井宏樹とともに身振り手振りでディスカッション。
「近場の選手とは共有した。今日だったら、宏樹、キヨ、サコ(大迫)、あと(山口)蛍。たまに(吉田)麻也も入ってくる。自分と直接関係がある選手とはそれなりに話しました」(本田)。