プロ野球亭日乗BACK NUMBER
武田のカーブ、千賀のフォークが……。
メジャー球で削がれた侍Jの投手力。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2016/11/11 12:50
メジャー球への対応は、WBCのたびに問題になる。メジャー組が合流すれば問題の一部は解決するが……。
プレミア12で好投した大谷も計算は難しいことに。
こうして登板した投手がメジャー球の洗礼を受ける中で、ほとんど影響を感じさせなかった投手もいる。
3番手で投げた大瀬良大地(広島)だった。
「真っ直ぐとカットボールだけ。滑るのは滑りますけど、うまく対応して投げられたと思います」
短いイニングならこれで十分に抑えられるということを示した内容だった。
「やっぱりカーブやフォークは難しいなと感じますね」
この日の試合でマスクをかぶった大野奨太(日本ハム)が指摘するように、指先でボールを弾くようにひねるカーブや、挟んで抜くフォークはもろに影響を受けやすい。そういう球種を武器にする投手の中には、適応ができずにいくら実績があっても戦力として計算できないケースが出てくるということだ。これは、プレミア12で好投した大谷翔平(日本ハム)も例外ではない。
楽に投げられるブルペンでは問題のなかった投手でも、実戦で抑えようと力が入る、滑らないように強く握るなどして、逆に抜けて制御が効かなくなる。山崎などはその典型でそこに権藤博投手コーチは苦言を呈していた。
「(ブルペンでは問題ないのに)マウンドに上がったら抜ける、引っかかるでは、それは投手じゃない。選ばれる人は(ボールに)適応できると思って選んでいるし、できなければ淘汰される。もう一度チャンスがあるかどうかはわからないからね。甘くないということですよ」
メジャー球に適応できる投手は確実に戦力として計算されるし、できない投手は脱落していく。その選別を行うことが、この強化試合の大きな目的にもなる訳だ。
メジャー球で大きなカーブやスプリットが使えれば。
メジャーで超一流と言われる投手、例えばロサンゼルス・ドジャースのクレイトン・カーショーやワシントン・ナショナルズのマックス・シャーザー、デトロイト・タイガースのジャスティン・バーランダーらは、いずれもパワーカーブと言われる大きなカーブの使い手である。またニューヨーク・ヤンキースの田中将大やシアトル・マリナーズの岩隈久志、ボストン・レッドソックスの上原浩治ら日本人メジャーリーガーが成功したのはスプリッットを自在に操れるからだ。
メジャー球では扱いが難しくなる、そういう球種を逆に使いこなせる投手が出てくれば――。その投手が来年の世界一奪回へのキーマンになるということである。